みなさん覚えておられますでしょうか?マウコムという選手を。2018年の夏、ローマはアリソンを売却したお金を握りしめて、その足てボルドーに所属するマウコムというブラジルの若きウインガーを獲得しようと考えました。その額3700万ユーロ、クラブ最高額です。ミッションは水面下でトントン拍子に決まり、その期待の高さからか、メディカルチェックどころか、ローマに到着していない時点で、両クラブの公式サイトから加入が発表される異例の事態となりました。(本当の理由は後述)
しかし、報道陣やらティフォージが詰めかけるフィウミチーノ空港にマウコムの姿はなく、いつの間にかまさかのバルセロナ入りをしてしまったのです。俗に言う強奪ですね。その当時、2018年7月24日の旧ローマ速報は以下の通り。
昨日、ローマ公式で発表されたボルドーのマウコム獲得ですが、ひとまず保留になっています。バルセロナが難航するウィリアン獲得に見切りをつけて、ローマが支払う予定の3700万ユーロよりもさらに高い4100万ユーロで強奪を狙ったのが事の発端です。これによりボルドーがマルコムの渡航をブロック。本人はまだフランスを出発しておらず、本日行われる予定だったメディカルチェックも中止となりました。
もともと無かったものに対しての喪失感はないけれど、それでバルセロナや彼らのファンがチャンピオンズリーグの敗戦の気が晴れるならばよかったですね。昨日も書いたけど、ウインガーは足りているちゃ足りてる。右の逆足ウイングがウンデルだけという部分がディフランチェスコ監督にとって問題なのだと思うけど、いなければそれはそれで配られたカードでやるしかない。ちなみに代理人氏は、自分たちの意思はあくまでローマと声明を発表しています。そして再燃するドメニコ・ベラルディ獲得話はもはやおもしろい。
ところで、親友のアリソンがいなくなったJJことファン・ジェズスですが、すぐに新しい友人を見つけご様子。本人曰く「アリソンはいないけどブラジルの新しい親友」で、名前はエウジニオだそうです・・・。どうか、みなさん笑ってあげて・・・・
心なしか笑顔が切ない。
そして完全に破談となった27日にようやく会長が声明を発表しました。以下は28日のローマ速報。
別に獲得できなかった選手に未練はないのだけど、アメリカ人でありながら、懐かしきカルチョマナーに倣った発言を続けるパロッタ会長がぼくは嫌いじゃないので、本日は彼の言葉をご紹介するとします。
今年5月、チャンピオンズリーグのジャッジに納得出来ずにテレビカメラの前で不満を爆発させて、そのおかげで、先日めでたくUEFA主催の大会で3ヶ月間チームとの接触を禁止させられた。それがローマの会長。ぼくの敬愛するアメ公、ジム・パロッタだ。例えばあなたがツイッターで同じ事をつぶやいても、誰もあなたを裁かないが、会長はメディアに対してあなたと同じ事を口にして罰せらる。そんなアメリカ人は軽率な経営者なのだろうか?仮に軽率だとして、その軽率さは愛ゆえではなかろうか。
ほんの6年前まではバスケ好きの投資家だった男が、今ではサッカーに興奮してローマの噴水にティフォージと一緒に飛び込むに至った。果してヨンホン・リーが、果してマロッタが、果してロティートがそんな事してくれるだろうか。人を惹きつけるのは常に熱量である。パロッタにはその熱がある。
マウコムについて①
パロッタ会長「さあ、私のトークショウを始めようか(笑)まずはマウコムでいいかな?彼はうちのスカウトチームが見つけて、3年間追い続けてきた若者だよ。ボルドーとは数週間前から交渉を開始したんだ。そこで十分に手応えを感じていた。彼はチャンピオンズリーグに出るクラブで出場機会を求めていたんだ。個人合意も取り付けた。そして先日いよいよフィウミチーノ(空港)に来ると報告を受けていた。夜10時の便だった。ロビーには噂を聞きつけた多くのロマニスタたちが集まった。いつもと同じで、メディカルチェックをパスしたら本契約という予定だったよ。その段階でボルドー側はSNSで発表したいと言ってきた。すぐに公式サイトで発表するともね。こちら側にも発表して欲しいとの事だった。我々は上場企業なので(正式な契約まで)控えたいと返答したが、それでもボルドーは強引に押し切ってきた。なぜ公表を急いだのだろうか?もしかしたらバルセロナの動向を掴んだのかもしれない。まあ、事実は闇の中さ。だが、若者は空港に来なかった。なんでもそのボルドーが止めたのだという。直後にこの取引にバルセロナが介入してきたと聞いた。代理人は明朝マウコムをローマ行きの飛行機に乗せると話してくれたが、ボルドーからは他のオファーを検討すると言われた。我々はすぐに数百万ユーロを上乗せしたさ。「こちらも契約の意志がある、早く飛行機に乗せてくれ」そう伝えた。彼らは翌日の午後2時の便で連れてくると約束してくれた」
マウコムについて②
パロッタ会長「その後眠れたか?いいや、全く眠れなかった。こんなとき眠れる訳がない。たしか午前3時に、モンチ、フランコ・バルディーニとチャットをしたと記憶している。モンチは早朝に代理人とテレビ会議をした。代理人はこう言った。「オーケー、モンチさん。ノープロブレムだ。ボーイを飛行機に乗せるよ。私の服を見てくれ赤色だろう?」(注:ローマのクラブカラーは赤である)しかし、我々は4人の代理人のうちの1人がカタルーニャに飛んだと情報を得ていたよ!だからローマには代理人も来なければ、選手は2時の飛行機に乗っていなかった。だが契約は成立していた。我々の手元には、テレビ会議の動画と膨大なメール、(契約を裏付ける)書類がある。加えて1億2000万ユーロのバイアウト(契約解除条項)にも同意していたんだからね。ボルドーのとった行為は明らかにおかしく、法的に問題があると我々は考える。インテルでもバイエルンでもいいが、他のビッグクラブと選手を巡って戦うならば私にとって何の不服もない。どのクラブも同じプロセスを経て選手を連れて来ようと努力しているのだから。しかし、全てに合意があり、取引が終了したあとに手を上げるのは間違っている。もしかすると「正式なサインをしなかったローマが悪いだけ」そう考える人がいるかもしれないね。で、あればそいつらはXXXXだ。なぜならば、我々の業界では誰もが知っている。メディカルチェックを経て、その後正式な書面の契約が取り交わされることを。他のクラブは皆、バルセロナのやった行為、ボルドーがしてはいけなかった事を理解している。それは業界の倫理と道徳に外れたアンフェアな行為だ。ハッキリ言って違法だね。私はバルセロナか近年、彼らのクラブイメージを損なうルールから外れた行為をして、これが慣例化していると思う。彼らは自分たちの行為を自覚している。その証拠にローマに正式に謝罪をしてきた。しかし、私はそれを一切受け入れるつもりはない。受け入れる条件はひとつだけ。マウコムをローマに返す事。まず不可能だろうね。もしくは親睦の証としてメッシを譲ってくれるならそれで水に流すさ」
モンチとメルカート
ローマに呼んだのは、スポーツディレクターとしてもビジネスマンとしても有能だからだ。この15カ月でさらに確信するに至ったよ。まだ我々のメルカートは終わらない。モンチには選手と直接話せばローマに来たくなるような魅力がある。ここまでモンチは素晴らしい成果を上げている。マルカノ、クライフェルト、そしてクロアチアの青年チョリッチ――彼は昨日良いプレーをしたね。彼らを見ればチームが大きく強化されたのが判るはずだ。それに右には既にウンデルがいる。トップリーグで1シーズンしかプレーしてないけど、彼の才能は間違いないし、ますます良くなっているだろう?ローマの前線は強力だ。ジェコ、シック、そしてクライフェルトも加わった。そしてエルシャーラウィ、ペロッティ、ウンデルといった優れたアタッカーもいる。これだけの攻撃的な選手を揃えていながら、昨シーズンはゴール数を前年よりも大きく割る事となった。その為、中盤からラストパスを多くクリエイトできる選手が夏の最重要課題となった。だからパストーレを獲得したんだ。一方で、6月に我々はナインゴランを放出した。ラジャに関して全ての問題を把握していないが、ディフランチェスコ監督は、テクニカルな理由や、年齢を考慮して今が決断するタイミングだと考えたのだと思う。ラジャ・ナインゴランはグラディエーターで、私たちはラジャを愛してる。しかしスパレッティもまたラジャを良く知る監督で、我々に交渉を持ちかけてきた。当時、ローマとインテルは互いに財政面の問題を抱えていて改善する必要があったんだ」
放出
パロッタ会長「次はアリソンの話だね。オーケー、真面目にやろう(笑)彼はとても素晴らしい選手だ。アリソンがローマを離れる日に私は彼と話をした。新天地での活躍と幸運、そして今後うちと対戦した際の5,6得点を除く無失点試合を祈ったよ(笑)そうして我々は7000万ユーロオーバーの資金を手にした。ロビン・オルセンはとても良い解決策だと思っている。少なくとも現時点では過小評価を受けている選手だろうね。しかし、モンチは現役時代キーパーだったから、彼のキーパーに対する視点は異なるものだ。ところで昨晩、モンチとバルディーニと私で幾つかのポジションに関して、二人の獲得候補の名前を挙げて議論した。それが誰かはここで言うつもりはないけどね」
<了>
ということで2年前のテキストを読んで頂きましたが、如何でしたでしょうか?ぼくはローマ以外のサッカーに明るくないので判らないですけど、おそらくそこまでしてバルサが求めるタレントということは、今じゃクラブの未来を担うものすごいフェノーメノになっているんでしょうねーと思っていたらゼニトに居ました。そんなマウコム自身が、初めてローマ移籍について言及した最新コメントをご紹介して終わるとします。
マウコム「実はローマとバルサとボルドーで話が揉めていたなんて知らなかったんだ。本当さ。だからローマに移籍できて嬉しいって思っていた。でもマルティン会長は高い金額を提示したバルサのためにぼくをローマには行かせなかった。それにバルサはぼくにとって最高の目標だった。ぼくの夢だったんだよ。会長はそれも知っていてくれたんだね。だからぼくはスペイン行きを了承したんだ」
こういった古いテキストを読むと、答え合わせが出来ますよね。時間がすべてを証明してくれるというか、結局あれだけの強奪劇の後に、マウコムはブレイクしなかったし、モンチが本当にビジネス的才覚を持っていたのかどうか、オルセンは解決策だったのか、またはこの数年のローマは成功だったのか、今回のRE-MIX記事を読んで各自で考えると面白いと思います。
コメント