俺はテレビドラマが嫌いだ。タフなヒーローは60分で事件にケリをつけるが、トラブルは毎週ひとつづつ、とても行儀よく順番にやってくる。しかしながら、実際にはトラブルは連鎖するというのが世の常であり、俺は彼女名義で借りていた代田橋の洒落たアパートをたわいも無いケンカが理由で追い出されただけでは済まなかったことで証明された。
そこはリノベーション物件で、室内はハイタワーマンションの物置みたいに綺麗だが、1階が昭和を感じるラーメン屋で、1度そのラーメン屋で坦々麺を頼んだら、醤油ラーメンに、若い2人が許されぬ恋路の果に手首から流す血のように波々とラー油の注がれた未知の食べ物が出てきた。後に俺は、千葉県勝浦で似たテイストのラーメンを食べた。問題は、その部屋には既に新しい男が居着いたことである。そいつは、宇宙の神秘、たとえばラージノーズグレイの事なんかを必死に思い浮かべながらスタイリッシュに腰を振っているのだろうが、俺はそんなことは意に介さない。そう、問題はこの部屋に全財産の入った財布を忘れてきたことなのだ。日中その男は部屋にいて、夜彼女が仕事から帰ってくると、男はお小遣いを貰って歓楽街へ消えていく。なぜそんなすれ違いの生活を選んだのかは今となっては判るはずもない。古代マヤ文明が残したロストテクノロジーのようだ。この2人がかりの24時間のマンツーマンディフェンスのお陰で、俺はトップ下のトッティのように足を、いや財力を削られていた。俺は麗しき女スパイの香水の香りや、タフな私立探偵の腕っぷしなどものともしないが、金が無いのはほとほと困り果てていた。そして、ポケットにはあの部屋の合鍵。忍び込む手段なら手札にある。とにかく俺には金が必要だ。愛はいらない。オールユーニードイズマネー。金が必要だ。誰かが囁いた。現金(ゲンナマ)に体を張れと。勝負なら1度きり。ふと古い歌の歌詞が頭を過ぎった。
『しあわせなんて何を持ってるかじゃない。何を欲しがるかだぜ』
親愛なるロマニスタ諸君、これが何だかわかるかい?確かにローマはジェコやザニオーロを持っているが、それじゃ十分じゃない。何を欲しがるか、だ。ローマって来季スクデット獲るかもなって、毎年思ってるけど、今年はいつも以上にそんな気がしてる。次こそつまらん夜はもうやめだ。
というのも、ローマはここで腹を括った。つまりスーパーマーケットでいることを放棄しようとしている。一説では、ユヴェントスのピルロ監督が獲得を望んでいるとされるジェコだが、フリードキンは新生ローマを象徴する選手にジェコ、ペッレグリーニ、ザニオーロを選んだ。この3人の移籍は少なくともこの夏は無いだろう。
ナポリからミリク獲得の噂もあるが、ミリク自身はユヴェントスとの個人合意の噂。ただし気をつけたいのは、奴らはこのタイプのストライカーと合意しておいて、メディカルチェックで心臓疾患の診断書を医者に書かせる。彼らが懇意にしているのは審判だけではない。
それはさておき、かつてローマに在籍していたダニエレ・ヴェルデというウインガーがいたのを覚えているだろうか?ローマにおけるその立ち位置は完全に今のミルコ・アントヌッチなのだが、意外とロマニスタの人気があって(あくまで当時は)、未来のバンディエラの呼び名も高かった(いやだから当時はね)。彼をデビューさせたのは、現在リヨンを率いるガルシア先生。その恩師がチャンピオンズリーグのセミファイナルを戦うと聞き、ヴェルデも大興奮のご様子。
ヴェルデ「な?俺はデビューする前からずっと言ってたんだ。ガルシア先生は俺が見てきたなかでも最高の監督な1人だってね。彼のような良い監督が数年後こうやってサッカーで報われるのを見るのは嬉しいよ」
ところで、今これを書きつつ、ローマ公式で配信されているジェコのゴール集動画を観ていたのだけれども、ヘディングの上手さも際立つが、改めてトラップでボールの置き所が逐一素晴らしい。これからもスーパープレーをしてくれそうな期待感がある。
最後にジェコがローマに残る理由を付け加えておこう。彼の奥さんアムラはジェコの子供を間もなくローマで産もうとしているのだ。
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