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【全文掲載】モウリーニョ、ファーストインタビュー『私はロマニスタの歓迎に値しない』

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7月2日、予定通りモウリーニョはローマの地を踏んだ。もはや我々ロマニスタにとってはお馴染みの光景だが、ダン・フリードキン会長が操縦するプライヴェートジェットで直接ポルトガルからイタリアに向かったのである。これまで多くのメガクラブ、ビッグクラブで指揮を執ってきたスペシャルワンも、こんな歓迎は初めてではなかろうか。俺たちの会長はジェット操縦するんだぜ!

そして、チャンピーノ空港には400人のファンが集まり、大合唱と発煙筒の煙で新監督を迎えた。これまでずっとローマを応援してきて、こんな場面に遭遇したのは初めてである。アルファロメオの警備車両とレンジローバーに挟まれた白いヒュンダイ車のモウリーニョは、窓からローマのマフラーを垂らした。この瞬間、イタリアで最も多くの警備に守られた要人だったに違いない。そして、トリゴリアに到着すると屋上で門の外にいるティフォージに挨拶をした。無言でマフラーのステンマ(エンブレム)を指差すモウリーニョ。その意味はこのインタビューを読めば判るはずだ。今のぼくはこれしか言う言葉がない。つまらん夜はもうやめだ!次こそ本当のローマを全員で取り戻そう!

 

ジョゼ・モウリーニョ監督、まずはこれを言わせて下さい。ローマにようこそ!

モウリーニョ「どうもありがとう」

この挑戦にどのくらい興奮していますか?

モウリーニョ「ここに来た時からだよ。正直にそう感じたんだ。オーナーやチアゴ・ピントと会ってすぐに前向きな気持になることが出来た。それは私にとっても大きな意味を持ったね。つまりだ。熱意とは、私たちがこれまで交わした会話であり、アイデアの共有に加えて、私が大切にしている事、共感という人間的な感情に基づいていると考えている。だから本当のファーストデイ、つまり今日、ローマに到着する初日を心待ちにしていたのさ」

ローマ入りがあなたにとって、適切な時期、適切な機会であると確信させたのは『人間的な感情』なのでしょうか?

モウリーニョ「もちろんそうだが、またそれは両者のアイデア、情報、質疑のやり取りでもある。初めてコンタクトを取った後、私はこう感じた。「これはフリードキンズのプロジェクトでもなければ、ジョゼ・モウリーニョのプロジェクトでもない。ましてやチアゴ・ピントのとも違う。これはASローマのプロジェクトなんだ」とね。私自身そう感じていたし、そこに本当の感銘を受けたと言わなければならない。みなさん御存知の通り、私はこれまでのキャリアで様々な経験をしてきた。外国人オーナーの下で仕事をしたこともある。その中で、ダン・フリードキン会長とご子息のライアン副会長がずっとロマニスタたちの話をし続けていたのは印象に残っていた。彼らは自分たちのことを話さなかった。彼らはプロジェクトのことを話さなかった。ただ、ロマニスタたちのことだけを私に話したのだ。クラブ所有者が「自分のクラブ」と表現するのはよくあることだ。無論ある意味ではその通りだが、私は彼らが、今ロマニスタの為に私にクラブの説明をしているのだと感じた」

モウリーニョ「私たちローマは、昨シーズンスクデットから29ポイント、チャンピオンズ圏内の4位から16ポイントも離れてシーズンを終えた。しかし、クラブとは昨シーズンの戦績で判断されるものではない。より広い観点で評価をする必要がある。だから、会長たちと最初に話して、私はASローマが何であるかを理解した。ロマニスタたちを知り、情熱を知った。もしもこのモウリーニョが「明日私はローマに行き、明後日には勝利する」と思ったのであれば、これはプロジェクトとは呼べないはずだ。なぜならば、これは今後数年間に渡り、クラブの遺産を残すことを意図したプロジェクトだからだ。ローマは持続可能なプロジェクトに取り組むことでクラブにとって、成功の基盤を作り、重要な事を成し遂げようと考えている。私はそれが、私の滞在する間にもたらされることを願っている。私はローマと3年間の契約を交わした。おそらくこれは最初の署名になるだろう。そして、いつか二度目のサイン(契約更新)をする。その為に、私たちがいる間に仕事の成果を手に入れたいと考えている。本当にそれを望んでいるんだ。ただ、今はひとつのことに取り組んで行こう。まずはこのプロジェクトに参加できたことを嬉しく思う。そして…改めて繰り返すが、これは誰のプロジェクトでもない。ASローマのプロジェクトなんだと言いたい」

チームとしてのコラボレーション、長期的なプロジェクトの構築があなたにモチベーションを与えていると聞こえました。そう考えて良いでしょうか?

モウリーニョ「アイデアが明確に存在して、プロジェクトも明確な形で我々全員が共有できているという事実は非常に重要だ。そして、クラブが私に何を求め、何を期待しているのかもハッキリしている。これも非常に重要だ。本当にマジで重要なことだと思うね。つまり、私たちはローマの成功を作りたい。それは未来の成功であって、一時的なものとは違う。一瞬だけの仮初めの成功ではなく、将来的な成功を目指している。当然そのためのマイナスの影響(如月注:先の成功のために現在のスポーツ的、メルカート的不利益を被るということだと思われる)は避けたい。持続可能な方法を取りたい。まず私たちは、あやゆる分野でのクラブの組織化を目指す。クラブはチームやそのチームの結果以上の存在だが、それらはバロメータであり限界に基づいている。故にそのバロメータと限界を広げる作業は段階的でなければいけない。私たちは周囲のすべての構造からそれを開始する。インフラストラクチャだけでなく人間関係も同様だ。そして、これこそオーナーが言うように、クラブに遺産を残す方法となるだろう。未来の為、そして、ロマニスタたちのためにそれをしていく。私の契約は3年だ。だから、このプロセスを加速させたいと考えている。ただ仕事に取り組むのが私のスタイルではない。もちろん、今働くことが未来のためであるのは理解しているが、その笑顔の未来を長い時間待つのも私の性分ではないのさ。全員で協力して、このプロセスを早めたいね」

イタリアでは、あなたの復帰が大きな話題となりました。最後にセリエAで監督を務めてからもう10年以上が経ちますが、その間に監督としてどのように変化したと思いますか?

モウリーニョ「昔よりも良くなっている。この仕事は経験が大きな意味を持つ。だから以前よりもずっと良くなっているという言い方だ。多くの経験を積むと、時折デジャヴのように感じたりもする。イタリアを去った後レアル・マドリーに行った。それは素晴らしい体験だったよ。イタリア、英国、スペインで優勝するという夢も叶えた。その後、家族を残してきた英国に帰ることもできた。その多くの経験の中には、チームを決勝に導いたのに、決勝では指揮できなかったというものもある。私のキャリアで絶対に起こらないと思っていたが、実際にはそれは起こった。つまりだ、このように多くの経験を積み、良い時も悪い時も学んできたので、今の私は昔よりも準備ができているんだ。監督という仕事はね、自分がやる気を失うその瞬間まで常に向上するしかない仕事だ。私は今でも学んでいて、以前よりも良くなっている。無論、ある国に来て、レベルゼロからその国のすべてを学び始めなきゃならない場合もある。だが、私に関してはそうではない。イタリアを知っているからね。サッカー文化としてのイタリアも知っていて、ローマも当然知っている。私がインテルを率いていた頃、ローマはスクデット争いの直接のライバルだった。2008年に初めてイタリアの地を踏んだ時よりも今のほうがよい環境で始められる」

次ページへ続く

コメント

  1. とっつぁん より:

    片野道郎さんの『モウリーニョの流儀』もめちゃめちゃ面白かったけれど、ホントにモウリーニョ監督の言葉っていいですね
    インタビューしがいのある人物だと思います
    敵対すると怖いけれど、味方になるとこれだけ頼もしい男は中々いないですよ

    • 如月/kisaragi 如月/kisaragi より:

      とっつぁんさん
      お書きになられている通りだと思いますね。味方にするとこんなにまで頼もしい。モウリーニョについて書かれた本はかなり読んでいますが、片野先生の本はぼくもとても参考になりました。
      いまモウリーニョをインプットしているので、もう時期何らかの形出アウトプットしていきますね。

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