タミー・エイブラハムの対談がデイリーメール紙に掲載されていたのでご紹介したい。ホストは、元リヴァプール、トッテナムで活躍して2013年に引退したダニー・マーフィー。同じ英国人同士の会話で、エイブラハムの飾らない言葉を聞くことができます。ロマニスタ必読の内容です。
マーフィー「私たち英国人はプレミアを最高のリーグだと称賛しているけど、実際のところセリエAと比較してどうなのかな」
エイブラハム「プレミアもセリエAも他にはないクオリティを持っている。特にイタリアのサッカーはとても戦術的だと感じた。つまり、対戦相手はできるだけ得点を阻止したいと考えて組み立てている。これはストライカーにとっては厄介だよ。ディフェンスはゴールを決めさせないことに集中しているんだからね。あとはすぐに学ぶ必要があったのは、フリーキックを獲得する方法とチームが落ち着きたいときにボールをポゼッションするということ。英国で言うところのチープファウル(安っぽいファウル)を貰うことや、そういった細かいことを積み重ねていった」
マーフィー「モウリーニョ監督とはサッカーエイドなどのイベントで何度かお会いしたことがあるんだ。一般的な気難しいイメージとは違って陽気な人だと感じたね。もちろんプロとしての顔は違うだろうけど」
エイブラハム「モウリーニョ監督はマネジメントの面ではトップレベルだと思う。選手への声掛け、一人ひとりへの対応、モチベーションを高める為のベストの方法を知っている。ただ…」
マーフィー「ただ?」
エイブラハム「俺にそういった言葉を掛けてくれたことはない。ハーフタイムに「よくやった」と褒められたことなんてないんだ。たとえ俺が心の中でいいプレーをしていると思っていてもね。監督は俺にはいつだって『もっと頑張れ』って言うんだ」
マーフィー「キミのことだけ褒めてくれない?」
エイブラハム「そう、昨シーズンのカンファレンスリーグ準決勝、レスター戦の前に監督のオフィスに呼ばれたんだ。そこでもこう言われたよ。「タム、お前の実力はまだまだだ」。その前の試合で得点していたからさすがに驚いた。理由を尋ねると監督にこう言われた。「私が常に見たいのはラツィオ戦のタミーなんだ」…これは俺の大きなモチベーションに繋がった。それがあってレスター戦で決勝点を決めることができたんだと思う」
マーフィー「ところで、イタリア人の選手のファッションセンスにはいつも感心させられる。英国人では身だしなみに気を使ったり、苦労することもあるんじゃないかな?」
エイブラハム「イタリア人選手はそこらへん意識高いね。みんなそのために1時間早く起きているんだ!でも俺は朝起きてトラックスーツに着替えて練習に行くだけ。でも英国人だってみんな大丈夫だと思うよ。ただなぁ、チェルシー時代の経験上、ベン・チルウェルとメイソン・マウントはイタリアに来たら苦戦するかもしれないな。あいつら独特のファッションセンスだから」
マーフィー「ジャック・グリーリッシュはいつも全身グッチで固めてるしね。ところで、今英国人選手が多く外国で経験を積んでいる。もちろんキミもそのひとりだ」
エイブラハム「人は変化を恐れるのかもしれない。誰だって居心地の良い場所にいたいに決まってる。でもやってみないと後悔することがあるのも事実だ。俺はこの先のキャリアがどうであろうと、イタリアで生活して、プレーして、違う人生を経験したことを振り返ったとき、それを誇りに思うだろう。ジェイドン・サンチョが良い例だよ。以前彼がドルトムントに移籍したとき、俺にはなぜプレミアを離れるのか理解不能だった。彼に続きジュード・ベリンガムもドルトムントへ行った。でも今ではサンチョが、英国人選手の海外経験という道を切り開いたおかげで、俺やトモリもイタリアに来たと思っているんだ」
マーフィー「ローマでの生活について訊かせて欲しい。以前リヨン移籍の可能性もあったけど、ローマ移籍で初めて外国生活を経験している」
エイブラハム「契約前にスモーリングと話をしたんだ。彼は気候は良いし、人々も良い、食事は美味しいし、なによりセリエAは良いリーグだと話してくれた。彼の言葉は間違ってなかったね。ローマは美しい都市だ。いろんな名所を散策して歴史の重みも感じたね。サポーターは情熱的で、どこに行ってもローマとラツィオのどちらかに分かれる。そのライバル関係はクレイジーなんだ!ガソリンスタンドに立ち寄っただけで大勢の人に囲まれてしまうほどさ。それだけにロンドンとは違って、ちょっと自分を見失うこともあった。慣れるまで少し時間が必要だったけど、みんないいひとたちだよ。まあ、さすがに家で過ごす時間は増えたけどね」
マーフィー「イタリア語はどう?」
エイブラハム「レッスンを受けているんだ。最近のインタビューでは二言三言イタリア語で話した。そしたら結構ウケが良かった(笑)あと面白いのは、クリス(スモーリング)はイタリア語は聞き取れるけどしゃべれないんだよ」
マーフィー「多少間違えても喋ろうとすることが評価されたのだろうね。ところで最後の質問なんだけど、私の息子はユヴェントスからやってきたパウロ・ディバラの超ファンなんだ。彼はどんな選手なのかな?」
エイブラハム「才能ある選手。12歳の子供にも見えるのにキャプテンシーを持っている。ユヴェントスで多くのトロフィーを獲得したのは伊達じゃないのさ。そしてそれは、俺たちローマが必要としていたものなんだ」
<了>
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