当初ディバラ獲得の資金ねん出の為に、ユヴェントスにザニオーロを売却するという話がありましたが、ふたを開けてみれば、ザニオーロは残留路線。先日チアゴ・ピントGMがロンドン主張で、トッテナムのパラティチSDと会談を行い、そこでもザニオーロは非売品であることを説明しています。トリノを離れたアンドレア・ベロッティもローマ入り目前とも言われています。ただし、カルレス・ペレス、ショムロドフを放出してまでベロッティ獲得に踏み切るその理由は、公式戦を待つしかありません。センターフォワードタイプのベロッティがスターターとしてプレーするには、エイブラハムからポジションを奪う必要があるのでしょうか?それとも共存することが可能なのでしょうか?
ローマのフォーメーションは3-4-1-2がほぼ確定というのがローマ系メディアの論調で、前線の3枚(FWx2、AMFx1)の組み合わせに多くのロマニスタ、ローマ系メディアが関心を抱いている状況ですので、今回のローマ速報では、スタメンのツートップは誰か?そしてトップ下に誰を置くのか?これをスタッツを読みながら考えていきたいと思います。*参照スタッツはセリエAのみ
今回は、ディバラ、ペッレグリーニ、ザニオーロ、エイブラハム、そしてベロッティの5名のスタッツを比較することにしました。
基本スタッツ
選手名 | 年齢 | 得点 | 得点期待値 | シュート数 | 枠内シュート | 枠内率 | シュート効率 | 平均シュート距離(Y) | FK試行数 | PK成功数 |
Paulo Dybala | 27 | 10 | 8.1 | 98 | 37 | 37.8 | 0.09 | 21.9 | 11 | 1 |
Lorenzo Pellegrini | 25 | 9 | 9.1 | 90 | 27 | 30 | 0.08 | 18.9 | 11 | 2 |
Nicolò Zaniolo | 22 | 2 | 4.8 | 70 | 20 | 28.6 | 0.03 | 17.9 | 0 | 0 |
Andrea Belotti | 27 | 8 | 7.6 | 55 | 16 | 29.1 | 0.09 | 14.8 | 1 | 3 |
Tammy Abraham | 23 | 17 | 20.5 | 93 | 32 | 34.4 | 0.16 | 12.2 | 1 | 2 |
2トップが誰かと書いておいて申し訳ないですが、まず前提条件として、2枚のFWのうち一人はエイブラハムで確定します。というのも、エイブラハムのスタッツが他と圧倒的で選択の余地がないように感じたからです。またモウリーニョが寵愛している選手でもあることから、多少コンディションを落としても使い続けそうです。
まず最初に見たいのは得点数と得点期待値(xG)です。得点期待値については、これまで何度か説明していますが、メジャーなスタッツですので、再度改めて説明します。
期待値には主に、ゴール期待値(Expected Goals)、アシスト期待値Expected Assists)、失点期待値(Expected Goals allowed)などがあり、これらは選手個人の能力などは考慮せずに、その特定のアクションの質を、最大値1(=100%)で割り当てたものです。
例えば、ゴール期待値(Expected Goals)であれば、あるシュートがゴールに結びつく確率を指します。これは距離と角度、当てた体の部位、パスの種類、プレーの状況(セットプレーかオンゲームか)、人の位置関係、攻撃の状況の統計値に各データサイト独自の要素を加えた値で、数字が大きければそれだけ得点確率が高いという意味です。
注意としては、あくまで統計なので、ディバラがシュート上手いから、同じシチュエーションのシュートでザニオーロよりも数値が上になるという事はありません。同じシチュエーションで同じ1回のシュートを蹴れば、全く同じ期待値が付与されます。
これを比較するために、実得点数と得点期待値の差数を出してみます。
選手名 | 得点 | 得点期待値 | 差数 |
Paulo Dybala | 10 | 8.1 | 1.9 |
Lorenzo Pellegrini | 9 | 9.1 | -0.1 |
Nicolò Zaniolo | 2 | 4.8 | -2.8 |
Andrea Belotti | 8 | 7.6 | 0.4 |
Tammy Abraham | 17 | 20.5 | -3.5 |
ディバラがの差数は+1.9で、理論値に対して、結果が上回っていることから、彼のシューターとしての能力の高さがぼんやり見えてきました。これにもうひとつ数字の後押しを加えるために、平均シュート距離を参照すると、21.9ヤード(約20メートル)と、この5人では最も離れたところから打っていることがわかります。さらには、枠内シュート率も37.8%と、これもこの5人の中で最も優れた数字です。
遠い距離から枠を捉える正確なシュートを打てるディバラ。そして、ゴール前で決定的な仕事をするエイブラハム、この距離感のアンサンブルは、彼らが同一ポジションを争う競争相手にはならず、むしろバディとして機能することを意味しています。逆に、ベロッティはエイブラハム同様に、平均シュート距離が14.8ヤードと短く、同時起用でポジショニングが被る可能性がありそうです。
参考までに基本スタッツのシュート効率について説明しておきます。これは(ゴール数-PK)÷総シュート数によって求められる指標です。、この数が大きいエイブラハムは、シュート数とゴール数に開きがない=効率の良い得点をしていると言えます。逆に効率が最も悪い(0.03)ザニオーロは、実得点と得点期待値の差数が-2.8であることからもシュートはバカスカ打つけど決められないことが判ります。*実際には彼の無駄打ちによって、イニシアチブを握れている側面もあるので、無駄に打つことが一概に悪いわけではありません。
パス
パス | |||||
選手名 | 成功数 | 試行数 | 成功率 | アシスト数 | アシスト期待値 |
Paulo Dybala | 916 | 1130 | 81.1 | 5 | 3.7 |
Lorenzo Pellegrini | 781 | 1088 | 71.8 | 3 | 6.2 |
Nicolò Zaniolo | 395 | 553 | 71.4 | 1 | 2.6 |
Andrea Belotti | 254 | 359 | 70.8 | 1 | 1 |
Tammy Abraham | 500 | 694 | 76.6 | 4 | 3.6 |
ここで完全に10番タイプ(ペッレグリーニ、ディバラ)とアタッカータイプ(ザニオーロ、ベロッティ、エイブラハム)に分かれました。ディバラとペッレグリーニのパス試行数、成功数はずば抜けています。二人とも多くの得点を上げていますが、PSMトッテナム戦で健在だったザニオーロとエイブラハムの抜群のコンビネーションを生かした攻撃の組み立てをするならば、ディバラ、ペッレグリーニはトップ下起用で考えてもよさそうです。
チャンスクリエイト
選手名 | SCA | GCA |
Paulo Dybala | 95 | 12 |
Lorenzo Pellegrini | 135 | 12 |
Nicolò Zaniolo | 81 | 9 |
Andrea Belotti | 38 | 3 |
Tammy Abraham | 80 | 12 |
SCA、GCAとは、データサイトFBref独自のスタッツで、SCA=Shot-Creating Actions(シュートに繋がる2つのアクションの数)、GCA=Goal-Creating Actionsはそのゴールバージョンです。例えば、ザレフスキがドリブルからDFの背後にスルーパスを出して、それをザニオーロが決めた場合、ザレフスキのGCAはドリブルとパスで合計2となります。以下参考動画(0:46のシーンより)
これを比較すると、ペッレグリーニがあたまひとつ抜けているのが判ります。ペッレグリーニはここ3シーズン、トップ下、ボランチ、時には右ウイングでプレーしていましたが、その間も常にSCAが3桁で、ポジションに関わらずシュートに絡む動きをしていることが判ります。これは先日のテストマッチ、シャフタール戦でも、ボランチ起用でありながら、しっかり攻撃に絡み、得点したことからも納得です。
仮説:ペッレグリーニはゴールまでの距離に関係なく、攻撃に絡む選手なので、前線にはより攻撃に特化した選手を置いた方が効率よくチャンスを作り出せる。
ボールタッチ
タッチエリア | ||||||
選手名 | ボールタッチ数 | Def Pen | Def 3rd | Mid 3rd | Att 3rd | Att Pen |
Paulo Dybala | 1473 | 9 | 158 | 746 | 662 | 90 |
Lorenzo Pellegrini | 1456 | 26 | 166 | 698 | 698 | 125 |
Nicolò Zaniolo | 967 | 8 | 86 | 482 | 514 | 121 |
Andrea Belotti | 596 | 13 | 36 | 268 | 327 | 99 |
Tammy Abraham | 1111 | 33 | 87 | 559 | 523 | 201 |
これも各人の色がしっかり出ています。ここまでの評価でスタッツから、ベロッティはアシストが少なく(1回)、SCAも少ない(38回)ことから、攻撃の組み立てに関与しないフィニッシャーか、もしくはトリノがカウンターチームなのかという仮説を立てることができます。個人的なインプレッションでは前者です。
さらに、5人中最も少ない総タッチ数(596回)でありながら、ペナルティボックスで最も多い99回のボールタッチという部分でも、やはりベロッティは、エイブラハムのバックアッパーなのかもしれません。
結論
如月は、シーズン序盤この並びが基本的な配置なるのではないかと予想します。昨シーズンはエイブラハムを連戦起用して、本人が疲れていても交代させることができない状況でしたので、ベロッティという主力とそん色ないストライカーを獲得することで、年間およそ60試合という過密日程を乗り切ることが可能です。誤解なきように補足しておくと、ベロッティは年齢、経験、能力ともにローマでレギュラーになれる選手ですが、まだプレーで結果を残していない(というか加入すらしていない!)ので、まずは監督に良いアピールをするところから始めるのかなと予想しています。
モウリーニョ監督自ら話しているように、昨シーズンのローマは、カンファレンスリーグで戦うために、セリエAでポイントを失う必要がありました。ですが、現在はほぼすべてのポジションに主力級の選手を数名置くことができている状態です。これでチーム内の競争力も高まりますし、そもそも、トッププレイヤーたちを絶妙にコントロールする能力こそがモウリーニョ監督の真骨頂だと思いますので、就任2年目の今シーズンこそ、監督の采配が遺憾なく発揮されると信じています。
これらのスタッツを見ながら「いや俺はザニオーロトップ下だと思うな」とか「3-4-2-1に戻すんじゃね?」とか、いろいろな説を考えるのもオフシーズンの愉しみのひとつです。ぜひロマニスタ諸氏も考えてみてください。そしていよいよ次の日曜日に開幕が迫っています。初戦はサレルニターナ、新シーズンが待ちきれないですね。FORZA ROMA!!!!
コメント