フランス代表からは全くお呼びが掛からなくても、ジョルダン・ヴェレトゥがローマを代表する1人であることは変わらない。彼は前節ウディネーゼ戦のドッピエッタで、フィオレンティーナ時代の自身のシーズンベストである8ゴールを超えた。
後半交代でベンチに下がるヴェレトゥにフォンセカ監督は声を掛けた。
「あと何点かね?」
ヴェレトゥは答える。
「1点ですよ。ミルテル」
この話は昨年のブレシーズンに遡る。その夏、ナポリがヴェレトゥにアプローチを仕掛けたのは有名な話だ。ストロートマンとナインゴランの魂を継承した、このフランス人ミッドフィルダーを闘犬ガットゥーゾ監督が気に入らない訳がない。
彼のエージェントであるジュフレディ代理人は、メディアに情報を流して掛け金を釣り上げるのが得意だ。フィオレンティーナ時代もミランとローマどちらにも売り込みを掛け、今度はナポリという訳だ。つまり夏の時点では、ナポリはヴェレトゥを求め、代理人もそれをやぶさかではないと感じていた。
夏のある日、フォンセカ監督はヴェレトゥを呼び止めた。「ジョルダン、ローマから出ていく必要はない」
監督は言葉を続けた。
「ローマに残ってくれ。私が君に少なくとも10ゴール以上決めさせてみせる」
こうしてヴェレトゥはローマ残留を決めた。驚くべきは、その後ヴェレトゥがメディアに語った言葉だ。
ヴェレトゥ「俺はアタッキングミッドフィルダーだ。フィオレンティーナ時代からどんどん守備的なポジションに変わっていった。でも俺はチームに必要ならそれでも構わない」
ヴェレトゥはアンカーの仕事を受け入れた。その仕事は言うなればラヴァトリーチェ(洗濯機)。汚いボールをキレイにする洗濯機の役割だ。決してシーズン10ゴールなど望めるはずがない。しかし、ヴェレトゥは先日のウディネーゼ戦のドッピエッタででカンピオナート9ゴール目を決めた。冒頭のフォンセカ監督とのやり取りは、約束した得点まであと何点かという意味なのである。
現在、2024年シーズン末までの契満了時に30歳になる、フランスA代表招集経験のない選手と、ローマはもう1年の契約延長を結びたいと考えている。それは簡単ではない。とにかく代理人がしたたかだ。先日、ローマとの契約延長の交渉の場でヒサイの売り込みをして、その翌日にはメディアを使って賭け金を吊り上げた。ジュフレディはヴェレトゥがナポリ中盤の解決策になると考えている。ローマに移籍金を払う為には、クリバリを売る必要があると話すが、さてどうなるだろうか?
ヴェレトゥは、カンデラの持つローマ歴代所属フランス人MF最多ゴール記録をもうじき追い抜こうとしている。
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