いまやローマ在籍のアルゼンチン天才プレイヤーといえば、パウロ・ディバラ一択だが、もうひとり近年ローマに天才がいたことを憶えているだろうか。それがハヴィエル・パストーレだ。ディバラ同様に球際の閃き、独創的なゴール、彼を一言で表現するならば『ファンタジスタ』が最も的確だろう。
ただし、現在の戦術的フィジカル主体のサッカーに於いて、ファンタジスタがほぼ絶滅したように、パストーレも現代サッカーに苦しむ一人となった。戦術よりも自分の閃きを信じ、インテンシティよりも想像力で戦った結果、彼は常に怪我に苦しんだ。結果、3シーズン在籍で37試合4ゴールはあまりにも少なすぎた。そして、ローマのオーナーが交代したことで、彼は後ろ盾を失ってしまい、昨夏に合意の元契約解除となった。
昔からのセリエAファンであれば、彼がパレルモで超新星のごとく現れ、パリサンジェルマンにステップアップしたことを憶えているだろうし、ローマでも天才の片りんを観ることができた。当時はもちろん恨みつらみもあったが、今となってはすべてが美しい。なによりファンタジスタという人種を現代サッカーのトップカテゴリーで観ることは本当に稀で、貴重な体験だったのだから。
パストーレ「機会があればもう一度でもローマに移籍しますよ。選手だけでなく、ファンにとってもローマはそう思わせるだけの並外れた唯一無二の場所だと思っているのです。残念ながら故障がちで、ディフランチェスコ監督体制の初年度は思うような結果を残すことはできませんでしたが、オーナーが代わったりして、多くのパズルのピースがはまらなかったという側面もあります。でもぼくはローマ移籍を何一つ移籍を悔いてはいないのです。この美しい都市で、ぼくに良くしてくれたロマニスタたちと美しい3シーズンを過ごしたのですから。SNSでは、ぼくがロマニスタたちから 批判されていたように伝わっていたかもしれませんが、むしろ逆で、街を歩いているといつもそこで暮らす人々の愛情や優しさを感じることができたのです。だからローマのファンはもっと報われるべきだと思っていただけに、自分があまり貢献できなかったことを残念に思います。だからこれまでのキャリアで、もしも後悔していることが何かと聞かれたらローマと答えるでしょうね。本当にこのクラブを勝たせたかった。難しい挑戦なのはわかっていましたし、コンディションが100%ではなかったこともパフォーマンスに影響しました。8ヵ月痛みに苦しみ、術後6ヵ月リハビリを続けました。でもチームはぼくの回復を待つことはできなかった。だからぼくにとってローマだけが心残りなのです」
<了>
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