トリノ、ユヴェントスと苦杯をなめたローマ。
文字通り敗北の味は苦いが、今夜はザニオーロの長期離脱という痛みがそこに加わった。この試合の前半、絶対的な主力であるニコロ・ザニオーロを前十字靭帯(ACL)の断裂及び、半月板の複数の損傷という非常に重い怪我を負ってしまったのである。
痛がり方には終末感のような不吉な雰囲気があり、それはテレビで観ていても伝わる異様さで慣れるということはない。あの痛がり方をして単なる打撲だったのは、ぼくの記憶の中ではシシーニョくらいだ。
ともかく、ACLと半月板はサッカー選手の故障の中でも、最もキャリアに影響する怪我で、特に半月板損傷は、競技人生、もしくはプレースタイルに影響を与える。半月板には縫合と切除、2つの手術方法があり、縫合による手術の場合、再手術のリスクがあり(*内側半月板のみ)、復帰まで平均6ヶ月掛かってしまうが、スポーツ復帰率は90%以上で、時間は掛かるが再びキャリアを続行することが可能だ。
一方で、切除手術の場合、復帰まで4ヶ月と時間を短縮することができる。ただし、膝のクッションである半月板を切除してしまうのはリスクが高い。例えばマドリーのラファエル・ヴァランは、2013年に半月板の72%を切除して、医者からは3ヶ月で復帰できると言われていたが、実際の所、完治してから痛みが完全になくなるまで1年間掛かったのだという。現在もオフシーズンには膝のリカバリートレーニングをしていて、現在も4,5試合以上の連続出場はできていないのだとか。
これからザニオーロが戦うゲームにはハーフタイムの笛はなく、完治まで時間の表示されないアディショナルタイムが続く。終りが見えない長く孤独な戦いが始まる。
具体的な怪我の程度がわからないので、案外(この種類の怪我の中では)そこまで深刻ではないのかもしれないし、現在はロベルト・バッジョの頃と違って、PRP療法というスポーツ再生医療も進歩している。この文章は、ザニオーロが復帰するという前提で書いていて、彼はこれまで以上に強くなって戻ってくるのは間違いない。
ストレッチャーに乗せられたザニオーロに寄り添っていたのは、カピターノ、フロレンツィ。彼もかつて2度のACL断裂という長い戦いを経験した選手だ。
2016年10月、マペイスタジアムのサッスオーロ戦でACLを飛ばしたフロレンツィの元に、試合後一人の同僚が訪れた。ダニエレ・デロッシ副主将である。更に副主将は、かけつけた家族や友人への怪我の説明を買って出た。医者から言われるよりも、同じサッカー選手の自分からの方がみんな落ち着いて訊いてくれるだろうという判断からだった。手前味噌ながら、このときの話はnote版に詳しい。
そして、昨日アルゼンチンからダニエレ・デ・ロッシが帰ってきた。彼は、フィウミチーノ空港で報道陣にザニオーロの怪我について質問されて、こう答えている。
「ザニオーロについてはニュースで読んだ。彼に会いに行くよ」
ぼくには、ダニエレの腕に巻かれているキャプテンマークが見えた。
先程、ヴィラスチュワートクリニックにザニオーロが到着した。このあと現地時間16時からマリアーニ先生による手術が始まる。まずは手術の大成功を祈って待ちたい。
コメント
如月さん
更新ありがとうございます。
結果よりザニオーロが心配でしたが、ダニエレの「彼に会いに行くよ」でちょっと涙目になりました。
カサビアンさん
引退しても、ボカに行っても仲間を大事にする面倒見の良さがダニエレにはありますね。ぼくもグッときました。