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【FBref データで読み解く】ASローマ・シーズン前半大解剖

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拝啓ASローマ殿

平素より御社所属のサッカーチームを日本から控え目に応援させて頂いております。今シーズンも丁度折り返しの19節が過ぎて、ユヴェントスとナポリの未消化試合が残っているものの、それでも3位を維持しているのはロマニスタとして誇り高い気持ちになります。

しかしながら、同時に社内不和の声が遠く日本まで漏れ伝わっており、これが多くのロマニスタを混乱させている事実がございます。2度の登録ミスによる没収試合、監督と選手の確執、またピッチの上では経験と老獪さを欠いた試合運びで、上位陣にきれいに取りこぼすという事態に陥っています。

つきましては、誠に勝手ながら、私ASローマ速報が御社所属チームの分析データをまとめて、それを日本のロマニスタに分析してもらおうと考えた次第でございます。

私たちが評価したいのは3つだけ。

✅攻撃は機能しているのか?
✅守備はなぜ失点が多いのか?
✅フォンセカはローマに相応しいか?

それでは、これからも御社所属クラブのご活躍を遠い日本から応援しております。

ASローマ速報~ROMANISMO Kisaragi


という大見得を切って始まったこの特集。ここから先はこの記事を読んでいるみなさんに委ねたい。世界中のサッカーアナリストが利用しているFBrefに掲載されている200項目以上のローマのスタッツを、ぼくたちファンが参考にできそうな5つのカテゴリーに分けました。

1.STANDARD/基本
2.OFFENSE/攻撃
3.DEFENSE/守備
4.PASSESパス
5.TACTICS/戦術

さらにその中で5つの項目を設けて、それぞれに数値の優秀な選手を3名選出しています。

ロマニスタのみなさんには

✅攻撃は機能しているのか?
✅守備はなぜ失点が多いのか?
✅フォンセカはローマに相応しいか?

これらを分析して頂きたいと思います。それではまず順位から見ていきましょう。

*以降特に明記のないものに関してはすべて19節時点のデータです。


現在順位(19節終了時点)

 

順位 チーム 消化節 ポイント 得失点 得失点差
1 AC Milan 19 43 13 4 2 39:22 17
2 Inter 19 41 12 5 2 45:23 22
3 AS Roma 19 37 11 4 4 41:32 9
4 Atalanta 19 36 10 6 3 44:23 21
5 Juventus 18 36 10 6 2 37:18 19
6 SSC Napoli 18 34 11 1 6 41:19 22
7 Lazio 19 34 10 4 5 32:26 6
8 Hellas Verona 19 30 8 6 5 25:18 7
9 Sassuolo 19 30 8 6 5 32:29 3
10 Sampdoria 19 26 8 2 9 30:29 1
11 Benevento 19 22 6 4 9 23:36 -13
12 ACF Fiorentina 19 21 5 6 8 20:30 -10
13 Bologna FC 19 20 5 5 9 24:33 -9
14 Udinese 19 18 4 6 9 20:28 -8
15 Spezia 19 18 4 6 9 26:36 -10
16 Genoa CFC 19 18 4 6 9 19:30 -11
17 Torino FC 19 14 2 8 9 28:37 -9
18 Cagliari 19 14 3 5 11 23:37 -14
19 Parma 19 13 2 7 10 14:36 -22
20 FC Crotone 19 12 3 3 13 22:43 -21

ユヴェントス、ナポリが未消化試合を残しているものの、ローマは3位でリーグを折り返すという善戦を見せました。3位で折り返したのはスパレッティの2016-17シーズン以来です。ただ内容は、41ゴールに対して32失点と上位チームの中で守備の脆さが突き抜けています。このアンバランスな得失点をぼくたちは「失点多すぎんだろ?」と評価できますが、これはあくまで量に関する評価であって、ここで『期待値』というデータを用いて、この量に対する質を分析することができます。

しっかり覚えたい期待値という言葉

データ分析のとてもメジャーな値で、これから更なる発展が期待される値。近い将来サッカー中継でも「〇〇選手の得点期待値は15.2ですからね」といった表現で語られる日が来るかもしれません。この企画で何度も出てくるので、ロマニスタとしては、しっかり理解して覚えておきたいところです。

期待値には主に、ゴール期待値(Expected Goals)、アシスト期待値Expected Assists)、失点期待値(Expected Goals allowed)などがあり、これらは選手個人の能力などは考慮せずに、その特定のアクションの質を、最大値1(=100%)で割り当てたものです。

例えば、ゴール期待値(Expected Goals)というのは、あるシュートがゴールに結びつく確率を指します。これは距離と角度、当てた体の部位、パスの種類、プレーの状況(セットプレーかオンゲームか)、人の位置関係、攻撃の状況の統計値に各データサイト独自の要素を加えた平均値で、数字が大きければそれだけ得点確率が高いという意味です。

注意としては、あくまで統計なので、ジェコがダイレクトシュート上手いから、同じシチュエーションのシュートでペドロよりも数値が上になるという事はありません。ジェコでもミランテでも同じシチュエーションで同じ1回のシュートを蹴れば、全く同じ期待値が付与されます。

この期待値で見ると、ローマは19節時点でゴール期待値、失点期待値に対する実際の得失点はこのようになっています。

期待値 実得失点総数
ゴール 40.4 41
失点 22.5 32

ローマは、総シュート数288本を蹴り、そのゴール期待値の累計は40.4、そして実際には41得点なので統計値とほぼ同じ数字ですね。でありながら、失点期待値の22.5に対して実失点が32と△9.5の差数があります。よくイケイケのチームが得点はバカスカ獲るけど、前体重過ぎて失点も多く順位はそれほど上げられなかったという現象があります。しかし、このデータでは、攻撃そのものは過多というよりも適正範囲内で、むしろ守備単体の質に大きな問題が生じていることを示しています。

勝敗の数に関しては、4敗中3試合が同格以上のクラブで、取りこぼしをせずに着実に勝点を積んだ結果の3位とも言えます。そこで取りこぼしとはなんぞや?を考えてみたいと思います。

取りこぼしを防いだ試合とは?
結果 ゴール期待値 実得点 差数
Milan 3:3(D) 2.3 3 0.7
Inter 2:2(D) 1.1 2 0.9

19試合中、ゴール期待値を上回る得点が11試合。その中でも、ミランとインテルの2試合は、ゴール期待値通りの得点で終わっていた場合、ミラン、インテルが勝ち越し、ローマが負けていた可能性を示唆しています。ですので、取りこぼしを防いだ試合をデータから判断するならばこの2試合を挙げます。

■ミラン戦ローマ速報マッチレポート

■インテル戦ローマ速報パジェッレ

逆に高いゴール期待値、低い失点期待値よりも、実得失点が下回ったのはユヴェントス戦で、データ的見地からローマが19試合中唯一取りこぼしたと言える試合は、第2節のユヴェントスということになります。

結果 ゴール期待値 実得点 失点期待値 実失点
Juventus 2:2(D) 2.7 2 1.3 2

それだけに、この試合で同点ゴールを決めたクリスティアーノ・ロナウドはデータ以上のインパクトを残したフェノーメノなのです。

■ユヴェントス戦ローマ速報マッチレポート

余談ですが、今季最もゴール期待値が低かったのは4失点したナポリ戦の0.3、つまり得点の予感のするシュートを1本も蹴っておらず、まさに完敗でした。

それではいよいよデータスライドを見ていきましょう。

STANDARD/基本

ローマにはエースストライカー不在の歴史があります。良い言い方をすれば一人の点取り屋に依存しない戦い方をしています。ですので、毎シーズン多くの選手が得点していますが、逆に言うと、ここぞの時に試合を決め切れる突出した選手が不在と言い換えることができそうです。
これは古くは、トッティがゼロトップを張っていた為に、有能な大型フォワードが確約されないスタメンを嫌がって到着せず、トップチームと同じメソッドで育成するプリマからも純フォワードが誕生しなかったことや、近年ではディフランチェスコ以降、チームがよりポゼッションするモダンサッカーに軸足を置いた為に、センターフォワードがボックスから外れる傾向にあったからと考えられます。

例外的に2016-17シーズンはジェコにボールを集めるサッカーをして、このシーズンに彼はセリエA29ゴールを達成、チームも2位でフィニッシュという結果でした。

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出場時間(分)

カンピオナート全出場者は以下の通り。

名前 出場数 スターター 出場時間(min.)
Henrikh Mkhitaryan 18 18 1,572
Roger Ibanez 19 18 1,570
Jordan Veretout 18 17 1,396
Lorenzo Pellegrini 19 16 1,398
Gianluca Mancini 16 16 1,322
Leonardo Spinazzola 16 16 1,268
Rick Karsdorp 16 15 1,321
Edin Džeko 15 14 1,172
Pedro 14 12 1,007
Antonio Mirante 11 11 973
Gonzalo Villar 17 10 864
Chris Smalling 11 9 852
Bryan Cristante 17 8 864
Pau López 9 8 737
Marash Kumbulla 11 7 662
Bruno Peres 14 4 562
Borja Mayoral 13 4 403
Davide Santon 4 3 248
Carles Pérez 10 2 305
Amadou Diawara 6 1 130
Juan Jesus 3 0 93
Riccardo Calafiori 2 0 21
Justin Kluivert 2 0 19

明らかに変化が起こるのはブライアン・クリスタンテとブルーノ・ペレスの辺りです。今季多くの試合に出ていながらその半数以上が途中出場です。それでいて直帰の数試合では、非常にクレバーで存在感のあるプレーを披露して、試合を変える重要なバックアッパーとして機能しています。これはスターターにインテンシティ(強度)の高い選手を使って嵐のように点を獲り、途中からテクニックや展開力のある選手で試合をコントロールしていきたいというフォンセカ監督の趣向が反映されているでしょう。
昨シーズン、フロレンツィがポジション争いに敗れてクラブを去りましたが、当初守備の不安が出場機会激減の理由とされていたものの、それ以前にフォンセカ監督の使いたいタイプではなかったのかもしれませんね。コラロフも同様に強さが出せなくなるとスピナッツォーラに主戦場のサイドバックを譲ることになりました。

ゴール・アシスト

ミキが8ゴールでトップ、その後ろにジェコとヴェレトゥが7ゴールで続き、マジョラルが5ゴールとなっています。これは、現在ローマが特定のストライカーに依存していないという事実が読み取れます。また、アシストでは両翼のウイングバックがノミネートしており、そのほかトップ下のペッレグリーニ、組み立てから刺しにいける万能型ストライカーのミキタリアンといった攻撃手など、アタッキングサードでバランスよく攻撃を作っていることが判ります。

ファウル・被ファウル

面白いのは、被ファウル(foul drawn=ファウルを引き出した数)で、我らがベビーレジスタ、ゴンサロ・ヴィジャールが最も多いということでしょうか。まだ積極的にヴィジャールを囲って潰してしまえというチームは現れませんが、自由に持たせると厄介でファウルで止めるしかない選手になりつつあるのかもしれません。

ヴィジャールは現地メディアから特にかわいがられている選手で、ローマ速報でも早い段階で特集を組んできました。

ゴンザーロ・ヴィジャール、ローマのベビー・レジスタ|如月たくみ ASローマ速報~ROMANISMO
未来は誰にも判らない。 今年の1月までスペイン2部のクラブでしかプレーしたことのなかった若者が、10か月後にはセリエAのパルマ戦にフル出場して、チーム最多の105ボールタッチ、93%のパス成功率、14回のディエルに12度勝利、6度のドリブルで一度もボールを奪われずにボールを運んでみせた。さらには、パルマの絶対的なエース...

OFFENSE/攻撃

シュート

オンゲームで放ったシュート数です。ローマのここまでの総シュート数は267本。つまり45%がミキ、鬼、イケメンのシュートです。参考までに首位のミランは、シュート数上位3人がテオ、チャルハノール、イブラヒモヴィッチで105回、チームトータルは277本なので、この3人で全体の37%です。余談ですが、この中にサイドバックのテオ・エルナンデスが含まれていることから、ミランは左に偏重したシステムを持っているのかもしれませんね。ミラニスタのみなさん如何でしょうか?
フォンセカ監督は度々「システムのバランス」を口にしますが、この点で、ローマの攻撃は両翼のアシスト数、中央のシュート数から、システマチックでバランスのとれたものであると考えられます。

ゴール÷シュート

ゴール÷シュート(以下GPS)は、何本打ってそれがどれだけネットを揺らしたかを数値にしたもので、出場時間に関係なくシューターの能力を端的に算出します。ということで、この数値の式はいたってシンプルです。

(ゴール数-PK)÷シュート数

10本以上シュートを打った選手の計算に必要なパラメータを表にするとこうなります。STANDARDのゴール数で3位だったマジョラルがここで0.36で1位となっています。

順位 選手 ゴール PK シュート GPS
1 Borja Mayoral 5 0 14 0.36
2 Gianluca Mancini 2 0 11 0.18
2 Edin Džeko 7 0 40 0.18
3 Henrikh Mkhitaryan 8 1 47 0.15
4 Jordan Veretout 7 4 22 0.14
5 Lorenzo Pellegrini 4 0 34 0.12
6 Pedro 3 0 27 0.11
7 Rick Karsdorp 1 0 10 0.10
8 Leonardo Spinazzola 1 0 15 0.07

やはり着目すべきはマジョラルでしょう。出場機会では首位3人に圧倒的に劣り、シュート数も同じアタッカーのジェコ、ミキと比較して14回とほとんど打っていないものの、実は3回に1度ゴールを決める高い打率のストライカーなのです。
そして実際にぼくたちはデータ以外に試合を観ていますから、彼が攻撃の組み立てで活きているのも知っています。もしもぼくがローマの分析家であれば、データ+実戦観察から、マジョラルはバックアッパーではもったいないとフォンセカに進言するかもしれません。

また、ディフェンダーでありながら、ジェコと同率2位のマンチーニの得点力も特筆に値します。彼は20節にもセットプレーから得点していて、現在フリーキックで有効な攻撃ができないローマにとって大きな得点パターンのひとつになりつつあります。

もうひとつ面白い結果がヴェレトゥです。彼はシュート数が22本、前項の通り得点はチーム2位の7得点を決めています。しかしGPSでランク外なのは、7ゴールのうち4ゴールがPKの為にGPSが0.14になる為です。それでもペッレグリーニ、ペドロよりも高い決定力を持っているのは驚きです。

参考資料・ヴェレトゥ ゴールデータ
Date Venue Result Opponent Min Gls PK
2020/12/13 Away W 5–1 Bologna 81 1 0
2020/12/23 Home W 3–2 Cagliari 90 1 0
2020/9/27 Home D 2–2 Juventus 90 2 1
2020/10/18 Home W 5–2 Benevento 72 1 1
2020/10/26 Away D 3–3 Milan 85 1 1
2020/12/17 Home W 3–1 Torino 90 1 1

シュート機会創造/shot creating actions

シュートに繋がった直前ふたつのプレー、つまりアシストのアシストを指します。8アシストのミキ、4アシストのペッレグリーニがここにもエントリーされているということは、この二人が攻撃の軸であることがわかります。これまで点が獲れなくても10番のプレーをしていたジェコが、今季それほど10番的に振る舞えない理由は、年齢による衰えという無根拠な説明よりも、この二人が攻撃をけん引し始めたために、ビルドアップに加われなくなっているということが説明になるかもしれません。

さて次は、DEFENNSE/守備を見ていきましょう。これはかなり予想外の結果となっています。

 

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コメント

  1. 孤高のロマニスタ より:

    素人の私には難しいすぎましたが読み応えのある面白い文章でした
    ここに書かれてることが全て理解できた時もっとローマのことが好きになれると思います

    • 如月/kisaragi 如月/kisaragi より:

      孤高のロマニスタさん
      感想ありがとうございます。
      この特集で書かれていることは、仰る通り、分かればローマ、サッカーの見方を豊かにすると思っています。

      より良い説明方法がないか模索しようと思います。

  2. tatti より:

    如月さん

    実に興味深い分析ありがとうございました。次回として、キーパーの数値から見る検証を是非ともお願い致します。
    ドンナルンマやハンダノビッチの安定感に比べ、何故不安で仕方のないゴールマウスなのか、数値的考察で是非ともご教示お願いします!
    ここが想定以上のパフォーマンス出せれば、もっと上いけるんちゃうんか!

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