ミルコ・アントヌッチという23歳のウインガーを知っているだろうか?知らなければこれから覚えればいい。なぜならば、彼は次のシーズン必ずセリエAでプレーするに違いないのだから。今から4年前、2018年にローマでプロデビューした若者は、サンプドリア戦で後半アディショナルタイムにジェコへの同点アシストを決めて、一躍ロマニスタのアイドルとなった。
鼻息の荒い若きサイドアタッカーの登場は2015年のダニエレ・ヴェルデ以来で、この久しぶりのローマらしい選手のデビューには多くのロマニスタが胸ときめいただろう。
この2015年、夏のメルカートで、イヌイット・ポップ、サディク、セック、ポンセと期待の若者がレンタルで旅立つ中、ディフランチェスコ監督(当時)が、トップチームに残したのがアントヌッチで、その事実だけでもぼくたちは彼の腕にまだ見ぬキャプテンマークを見たのだ。
その後、ローマを離れたアントヌッチだったが、移籍先で期待に応えるプレーをすることが出来ずにいた。しかし、2021年にチッタデッラに完全移籍すると、結婚、第一子誕生と人生の転機を迎え、そのプレーにファンタジーアが加わり、今季からは、その資質にふさわしい背番号10をつけてプレーしている。
ぼく個人としては、ローマを移籍した後もずっと動向を追い続けていた選手だけに、彼の躍進は本当にうれしいし、彼がもうひとつ上のカテゴリーで戦えることを知っている。ローマのプリマを卒業して、セリエBに主戦場を移す選手は多い。しかし、そこから再びセリエAに戻ってくる選手は多くはない。いまぼくは彼がその夢を実現することを期待しているのだ。
それでは彼の最新のインタビューをご紹介しよう。
直近3試合で3得点を決めています。どのようなお気持ちですか?
アントヌッチ「自分のゴールでチームを助けることができて本当にうれしいんだ。この夏は、昨シーズンよりもたくさん得点しようと目標を決めた。今はそれを達成したね。トレーニングでも試合でも、とにかく常にゴールを意識してきたのが良かったと思うね」
あなたをローマに連れてきたのは、レジェンドのブルーノ・コンティという逸話は有名です。その時の話を訊かせていただけますか?
アントヌッチ「ぼくがローマに来たのは13歳で、実はインテルからもオファーが来ていたので、どちらかを選ばなければならなかった。でもローマ人でロマニスタのぼくに選択の余地はなかったよ。ローマに入れるなんて夢のような話だったからね。まあ、ラツィオもぼくを獲得したかったらしいけど…」
そしてプリマヴェーラに昇格するとあなたは背番号10を付けました。それはどのような意味を持っていましたか?
アントヌッチ「ローマで背番号10は重要な番号だ。それに当時ぼくはプリマのキャプテンでもあった。ロッカールームでみんなとはしゃいでいるときも、常にローマのリーダーとしての責任を感じていた」
そしてサンプドリア戦、憧れのマラッシでトップデビューを果たします。
アントヌッチ「なぜオリンピコじゃなくてマラッシだったのかは覚えてないけど、小さいことろから母親に「プロになってかならずあのスタジアムでデビューする」と話していたんだよ。そして実際にそこでデビューをした、さらにジェコさんのアシストも決めた。最高の思い出さ…最高の思い出だけど、今振り返ると他人事のようにも思える」
どうしてなのでしょうか?
アントヌッチ「その後、ぼくにいろんな変化があって、今では異なる見方ができるようになった。つまり、あの時確かにぼくは鮮烈なデビューを果たしたのかもしれないけど、まだそれだけの準備のできていない若造だった。通りを歩いていると誰かに呼び止められて、写真を求められる。それが大きなプレッシャーになるなんて想像もできなかったのさ」
その後ポルトガルで国外のクラブを経験しました。そこから得たものは何でしたか?
アントヌッチ「そうだね。良いエピソードがあるよ。ぼくが代理人のサビアーノと試合の後に食事に行ったときの話だ。ぼくたちはセトゥーバルのイタリアンレストランに入った。でもそこはイタリアとはかけ離れた雰囲気で…。マルゲリータを注文したんだけど、出てきたものもイタリアとはかけ離れていた(笑)モッツァレラチーズはどろどろに溶けていて、カットされたトマトがその下に敷き詰められていたんだ!」
インスタグラムで「どん底に落ちた時、反発するか、諦めるか」と書いていましたが、あれは何を指していたのでしょうか?
アントヌッチ「サレルニターナでプレーしたとき、シーズンの前半はずっと出場できなかった。1月に移籍を申し出たけどオファーもなかった。22歳という年齢で自分を信じることができなくなり、今だから言えるけど練習すらする気が湧かなかったよ。サッカーをやめようとすら考えた。でもメンタルコーチのサンドロ・コラピさんと話をしたことで人生は変わった。その後、再び試合に出るようになり、今のぼくは自分が望んでいた姿だと思う。だからまるでふたつの人生を歩んでいるような気持ちになったんだ。ローマ時代はぼくを成長させたよ。そして、次の人生で成熟したんだ」
サッカー選手として最高の瞬間は?
アントヌッチ「間違いなくリヴァプール戦のチャンピオンズリーグデビューに違いない。でも第二の人生ではチッタデッラで最初に決めたゴールを選ぶと思う。あの得点でぼくは開放されて、新しい出発ができたのだから」
今でもローマに戻りたいですか?
アントヌッチ「ぼくの夢はセリエAに戻ることなんだ。戻ってそこで地位を確立したい。それがローマで実現したらもっと嬉しいし、旅の終わりになるだろうね」
<了>
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