今年の5月頃から、ロマニスタの間で一人の若者名前が囁かれるようになった。それがスペイン人MFゴンサロ・ヴィジャールだ。2018年に3年在籍したバレンシアを退団して、古巣エルチェに復帰。そして、2020年の冬のメルカートでローマに来た。それまで自国スペインの2部でプレーしていたこの若者は、異国の地でわずかなチャンスを掴み取り、メディアからイル・ベビーレジスタという愛称まで付けられるほどの注目選手になった。誰もが、この街が失って久しいピッチの演出家(レジスタ)であると気が付き始めたのである。
ということで、今回のローマ速報は、ヴィジャールがかつて過ごしたバレンシア時代を知る、Penya VCF Nippon(バレンシアCF公式ファンクラブ)のプレジデンテで、ファンサイトVCFAJAPAN.ORG管理人、奥山貴寿会長に当時の話をお聞きした。
*バレンシア練習場のヴィジャールと奥山会長(左)
奥山会長には以前フロレンツィの件でも登場頂いたので、勝手にその親しみから、質問がヴィジャールとは無関係のものにまで及んだが、それも込みでロマニスタのみなさんに楽しんで学んで頂ける内容になっている。特に財政面の話などは「あれ?・・バレンシアにもパロッタとバルディーニ?」となるだろう。
これを読んでヴィジャールのみならず、バレンシアやラ・リーガに興味を持っていただけたら、カンピオナート敗戦直後という悲しみの中でがんばって更新した甲斐があるというもの(がんばったのは回答した人じゃない?というのはさて置いて)
ではではどうぞ!
Name in home country: | Gonzalo Villar del Fraile |
Date of birth: | 23-Mar-98 |
Place of birth: | Murcia Spain |
Age: | 22 |
Height: | 1,81 m |
Citizenship: | Spain Spain |
Position: | Midfielder – Central Midfield |
Foot: | right |
Joined: | 30-Jan-20 |
Contract expires: | 30-Jun-24 |
バレンシア加入当時、ヴィジャールの一般的な評価は?
スペインU-17代表に選ばれたことがあっても試合出場経験が無かったため、ほとんど知られていない選手だったと思います。
バレンシアファンからの評価は?
バレンシアは通常、下部組織の選手を獲るのにお金をかけない(移籍金を払わない)のですが、彼に関しては移籍金を払って獲得したことをあり、無名だったにもかかわらず地元紙でも取り上げられたことを覚えています。1年目はフベニールA(U-19)所属でしたが、カルロス・ソレールの昇格で空いたCHのポジションに彼がすぐに収まりました。この年のフベニールAはタレント揃いだったのですが、リーグ戦でもUEFAユースリーグでも最後までレギュラーを明け渡すことなくプレーしました。3年目にBチームに昇格しましたが、トップチームのマルセリーノ監督からも高く評価されていて、シーズン終盤にはトップチームにも呼ばれました。翌シーズンには確実にトップチームデビューする選手だと誰もが感じていたと思います。
バレンシアで似たタイプの選手は誰か?
既に退団してしまいましたが、パレホを思い出します。実際に30歳になったパレホの後継者として期待されていました。今でもバレンシアに居る選手、ということだとボールタッチや長短のパスの精度が非凡なセンターハーフということで、カルロス・ソレールが近いと思います。ソレールはサイドのプレーヤーというイメージがありますが、元々はトップ下やセンターハーフを得意とする選手です。
バレンシアのトップチームに昇格する可能性はあったのか?
先ほどの答えと重なりますが、バレンシアに残っていれば彼のデビューはエルチェではなくバレンシアになったと思います。
ヴィジャールのエピソードは?(ピッチ内外)
興味深いエピソードではないですが、彼がBチームに昇格した時、当時のペネフ監督は最初彼にチャンスを与えず成績もふるわなかったのですが、ペネフ監督が辞めた後のミゲル・グラウ監督がヴィジャールをレギュラーに置いたら14戦連続無敗という結果が出ました。
なぜバレンシアを出ていったのか?
2018年の夏のことですね。ビジャールの能力面に問題はなく、バレンシアも契約延長オファーを出していました。彼がバレンシアを去ることになったのは当時の彼の代理人のペレ・グアルディオラ(ペップの弟)のせいです。
ヴィジャールは16歳の時にバレンシアと契約しましたが、このことについてペップ弟が「未成年の時にサインしたものなので契約は無効。フリーの選手として他のクラブに移籍金無しで出て行く。契約延長したければもっと良いオファーを持ってこい」とバレンシアを脅しました。これにバレンシアが怒って契約延長オファーを取り下げ、この主張が無効であることを確認後、ヴィジャールに「契約破棄のため違約金800万ユーロを支払うこと」と通告しました。ヴィジャールは代理人がバレンシアを脅していたことを知らなかったようで、後日バレンシアに謝罪したのですが、バレンシアは厳格に処分をくだしました。それがエルチェへの移籍でした。
参考資料:ゴンサロ・ビジャール退団
ただ、バレンシアは彼を完全に見限ったわけではなく、エルチェで経験を積んだ後、バレンシアに買い戻すオプションも残していました。ローマがエルチェにオファーを出した際に、バレンシアも買い戻そうとしましたが、ヴィジャールがローマ行きを望んだため、彼の意思を尊重して買い戻しオファーを取り下げました。
現在バレンシアの下部組織で有望な選手を教えて下さい。
今季すでにブレイクした、と言っていいMFユヌス・ムサですね。まだ17歳ですが今季開幕戦から右サイドのレギュラーを確保し、アメリカ代表デビューも果たしました。今季終了時にはきっと移籍市場で名前が聞かれるようになると思います。他には、フランスU-20代表MFコバ・レイン・コインドレディ(19)、スペイン人ウインガー、ウーゴ・ゴンサレス(17)の名前も上げておきます。
*ユヌス・ムサ(18)
バレンシアでフロレンツィはどうだったのか?
コロナで普通じゃないシーズンになってしまったことを残念に思います。難しいチーム状況の中でよく適応してくれました。加入2試合目で一発退場、その後に怪我となってしまったのでポジティブなイメージが無いバレンシアファンも居ますが、コロナ中断が明けてからは充分なパフォーマンスをしてくれたと思います。
フロレンツィを買い取る動きはあったのか?
スポーツ的な面でいえば「買い取る」という選択しかあり得ませんでした。ただ、ご存知の通り、今のバレンシアはとにかくお金がない…補強に1ユーロもかけられない状態で、大量に主力を放出したにもかかわらず今季の補強はレンタルバックの選手のみとなりました。それに倣って彼を獲得する余裕もありませんでした。
なぜお金がないのでしょうか?ローマもセリエA史上ワースト記録に迫る負債を持つクラブです。こういったクラブの赤字経営はどうすれば改善されると思いますか?
お金がないのは経営陣が無能だから、ですね。バレンシアについてはサッカーの世界を知らないワンマンオーナーの経営センスの無さが、クラブを沈めています。 オーナーのピーター・リムは、何をするにも友達のジョルジュ・メンデス(有名な代理人)に相談して決めているのですが、その結果、移籍マーケットではメンデスを喜ばせるためにメンデスの儲けに繋がる選手は市場評価額よりはるかに高い金額で連れてきて、メンデスが絡んでいない選手を市場評価額よりはるかに安い額で放出する、を繰り返してきました。その結果、高い移籍金を払ってチームにフィットしない・リーガで戦うレベルに無い選手が多く在籍することになりました。 加えて、オーナーはプライドが高いので、自分に意見を述べるスタッフや選手たちをどれだけ貢献しているか関係なく切り捨ててきました。チームに11年ぶりのタイトルをもたらした監督とGMを「自分が気に入らない」という理由で追い出してしまいました。こういうオーナーの言動に不満を抱えて、チームのレギュラークラスの選手たちが移籍を志願し、また安い移籍金だけが残る、を繰り返しています。 改善するには、まずはオーナーが変わること、これが実現して初めて改善に向けてスタートを切れるわけであり、これが実現しない限りバレンシアが上昇することはありません。
バレンシアのコロナの影響は?
他のリーグにも共通するかもしれませんが、無観客試合が続いている事がデメリットだと思います。バレンシアに関していえば、本拠地メスタージャの後押しを受けて気持ちが乗ると力強い戦いを見せるというチームなのですが、コロナ中断以降その傾向はみられません。他にもホームでファンの後押しを得られないこと、相手チームにプレッシャーを与えられないことでホームゲームで思うよう結果が出せていないチームが多いのではないでしょうか。
今シーズンのラ・リーガはバレンシアファンからどのように映っているのでしょうか?
今季ここまではレアル・ソシエダやビジャレアルなど、フロントがしっかりしていて育成に定評のあるクラブが健闘しているなという感じです。マドリーの苦戦はキープレーヤーの離脱の影響、バルセロナの苦戦は監督とチームの相性が良くないから、なのかな?他のクラブの情報が僕には足りてないので、的外れなことを言ってるかもしれません。
今シーズンのバレンシアの目標は?
過去の栄光を思い出すと寂しい話ですが、1部残留が今季の目標です。
バレンシアファンから見てセリエAは現在どのように映っているのか?
ヨーロッパカップ戦が夏まであったこと、補強が難しかったことなどもあり、どこのリーグも順位表が例年とは違う見え方になってますね。セリエAでいうと久しぶりにミランが好調なのは面白いと思っています。
*回答はすべて個人の見解であり、Penya VCF Nippon会員の総意ではありません。
以上Q&Aでした。バレンシアは現在結果が出ているクラブではありませんが、それでも変わらずにクラブを愛し続けるというファンの姿勢は、浮き沈みの激しいローマを応援する事と似ていると感じています。というよりもお金がない理由がそっくりで驚きました!
Penya VCF Nipponはtwitter公式アカウントも持っているので、ぜひみんなで訪問してフォローしたり、この記事を拡散して頂いて一緒に盛り上がっていけたらと思います。フロレンツィの移籍だけでなく、我々の敬愛するマエストロ、サー・クラウディオ・ラニエリが指揮したクラブでもあります。これだけ接点があるのだもの、来シーズンも選手を貸し借りしたり、フレンドリーマッチが行われたりするかもよ!
またこれでヴィジャールに興味を持っていただいた方は、よろしければnoteの方でロングインタビューを購読してみてください。おかげさまで多くの人に読んで頂いてます。今回のテキストと併せて読むとさらにヴィジャールの理解度、愛着度が増して、次の試合が楽しみになること間違いなしです。よろしくお願いします。
コメント