1月28日、現地時間12時過ぎにその一報は報じられた。
アレッサンドロ・フロレンツィ、スペインへ移籍か?
これは飛ばし記事ではない。時間の経過とともに現実味を帯びてきているのだ。ローマっ子が夢見るデルビーを、ベンチの特等席で観戦したフロレンツィが何を考えたかはわからないが、ウイングに故障者が多発していながら、テストすらさせてもらえず、その間にザッパコスタの復帰が近づいているという現状はタフだ。あと数ヶ月で、ユーロの足音も聞こえてくる。彼に代表の特等席はなく、その立ち位置は揺れている。なによりも、フォンセカ監督はサイドにインテンシティを要求しており、スピナッツォーラ、ザッパコスタ、コラロフ(加入時よりは衰えたようにも見えるが)といった同ポジションの選手たちと比較して、フロレンツィのストロングポイントはこのチームでは見えにくい。
昨日の流れを追っていきたい。
14:10 代理人アレッサンドロ・ルッチがトリゴリアに入る。ヴァレンシアからのオファーについて話し合いが始まった。
14:30 Il Tempoの記者がオファーの内容を報じた。先方が求めるのは、レンタル移籍で、シーズン後に1500万ユーロの買い取り。フロレンツィは既に移籍にオーケーをだしている。しかし、ローマは完全移籍を望んでいるらしい。
14:50 レオネサとのコパ・デル・レイに臨むヴァレンシア、セラデス監督の会見で、ジャーナリストからフロレンツィについて質問があった。監督は「状況については説明できない」とコメント。これは、交渉の存在を決定的にした。
15:50 ヴァレンシアとフロレンツィの個人合意が改めて報じられた。この先はクラブ間の話し合いが進められる。イタリア、スペイン間の選手移籍規約、交渉期限、高い経費を考えると、交渉は複雑化する可能性もあるとのこと。
17:45 Corriere dello Sportによると、ルッチ代理人はヴァレンシアへ向かった。
ローマのカピターノの出発は最終局面に突入した。思えばデルビーのベンチは、テクニカルな理由に加えて、交渉の存在を匂わすものだったのかもしれないし、ローマを離れてもなおクラブへの忠誠を表現し続けたデ・ロッシに、ローマ人プレイヤーとしての新しい姿を見たのかもしれない。出場機会の限られている選手にとって、重要なアピールの機会であるコッパ・イタリアを落としたことも痛手となった。なによりも本人が重要視しているのは、次のユーロをテレビの前ではなく、芝生の上で過ごすにはどうしたら良いかということだ。
キャプテンやバンディエラの称号は飾りではない。トッティはかつてこう言った。『一流になるよりも一流で居続けることの方が遥かに困難だ』と。ベンチからでも求心力を持つリーダーはいるにはいるだろうが、基本的に闘争とはピッチの上で示される姿勢であり、今年29歳という年齢を考えれば、ローマもフロレンツィも、お互い一度何かを決断をしなければならない。フロレンツィを軸にチームをデザインできなければ、フロレンツィが変化する必要がある。それがプレースタイルか、環境かはぼくにはわからない。
あと一つだけ余計なことを書いておくと、この移籍が成立したとして、今後、公式サイトや公式ツイッターが『フロレンツィの新しい冒険を応援しましょう』みたいな、子供の頃に従弟の家で飲んだ激薄なカルピス以上の薄い言葉ををファンに向けて書くならば、そんな羽毛以上の超軽量級の言葉をぼくは受け入れない。
ぼくは子供のころから「さあみんなで〇〇しましょう」と言う大人の言葉にひっかかるものを感じていた。親に勉強しろと怒られたときには「いまやるつもりだったのに、もうやる気なくした!」みたいな気持ちで腐っていた。つまりひねくれた子供がそのまま大人になり、ローマと出会った。それが如月であり、ローマ速報である。
ぼくは確かに、決して善いサッカーファンじゃないのかもしれないが、それでも何が自分のロマニスタとしての矜持か、どのような感情に従うべきかは判っているつもりだ。この出発が実現すれば、フロレンツィを昔から応援してきた人たちにとっては大きな傷になる。トッティ直撃世代よりも若いファンならなおさらだ。ぼくたちは、良いことも悪いこともネットやテレビを通じて彼と一緒に体験してきた。大怪我でプレーできない時も一緒に乗り越えた。誰かに指図されなくたって、どこに行っても、彼の決定を受け入れ、全力で応援するに決まってるじゃないか!
ヨーロッパに優れたサイドバックは数多く存在しているけれど、ぼくたちにとってカピターノ、フロレンツィは一人しかいない。
コメント
ホントの最後の最後は周りではなく自分で決断して欲しい、それがローマとの別れであっても、自分のサッカー人生なのだから、スペインに行こうがどこに行こうがフロが我々にローマで与えてくれた感動や興奮を忘れる事はありません。
トッティはレアルを蹴りローマでトロフィーを掲げずそれでも後悔という言葉は口にしませんでした、デ・ロッシは最後にボカへ行きゴールを決めて満足して引退しました、ローマに残ろうと移籍しようとフロレンツィがこの後どんなサッカー人生を送るのか楽しみです。
TWRさん
まさにそうですよ。今回ぼくの言いたいことは、選手の移籍の是非ではなくて、ファンとしての姿勢の話で、そもそも30に手が届かんとする大人の選択には理解を示したいし、彼が与えてくれたものがそれで台無しにはならないですよね。
(もし本当に移籍するならの話ですが)
ローマでスタメンも取れずに他所に移籍するような選手を、
トッティやデ・ロッシと同列視・特別扱いしないでほしいです
ですので私は如月さんとは全く逆で、他の選手と同じように事務的なコメントでフロレンツィを送り出してほしいです
るろうにロマニスタさん
本人が何を選ぶかまだわからないのですが、レンタル移籍なら「成長して帰ってこいよ!」という気持ちは持てます。トッティ、デ・ロッシの時代でも難しかったのに、この時代ひとつのクラブに居続けるのはさらに難しいんだなと痛感しています。
移籍はとても難しい。フローレンティもアズーリに参加する為の決断なんだろうね。先日のすったもんだのポリターノもナポリに。このフローレンティも移籍先での活躍を祈るだけ。それでもローマは続いていく。FORZA ROMA
siwaoさん
代表は年齢的にもラストチャンスかもしれないから、やはりマンチーニ監督へのアピールをするには移籍という気持ちは理解できます。
仰る通り、これからもフロレンツィはサッカー選手であり、ローマも前進していきますね。
トッティ、デ・ロッシの後、カピターノの継承としては、どこの一流プレイヤーにとってもあまりに重たい勲章。
ロマニスタにしか理解できない勲章。
一つ言えることは、彼も偉大なカピターノ達同様、ローマを心底愛してると思います。
どこにいても心底応援しますよ!
tattiさん
ローマに残ってくれたら最高だけど(正確には残るのは普通で、それ以上の活躍をするのが最高)、どこでプレーしても絶対応援するし、活躍したなら「こんなのローマじゃ普通だよ」てな誇らしい気持ちになるのだと思います。
バンディエラは周りが作るものではなく結果としてなっているものだと痛感しますね。
アスリートは短い選手生命の中で人生を築かないといけないので、ある種の呪縛に縛られてしまっていてはクラブも本人も不幸になってしまうかもしれませんし、ローマっ子の肩書がなければプレーできない選手では勿論ないので移籍が決まれば思いきり後悔させて欲しいです
tacuさん
先日トッティが「今の時代なら俺はローマには残れなかっただろう」と言ってました。一度きりの競技人生なので、悔いを残して欲しくないし、ぼくたちも悔いの残らないように応援したいです。
ただ、昨日のトレーニングいなかったのでコッパ・イタリアがラストマッチという可能性もあり得ます。
フロレンティの長い距離を走る走力や、印象に残る、逆境で決める、潮目も変えるゴールは特別(他の選手はできない)で格別だったと今でも思います。ここ最近は残念ながらシュートセンス(回数ではない)が落ちて来ている…。テクニックなどどうでも良いので劣勢を跳ね返す、勇気を与えるあのゴールがまた見たい!
hogeさん
フロレンツィのポジションは監督によって全く仕事が異なり、そこで自分の持ち味を出せなくなっていたように感じています。
彼が選択したのは、ヴァレンシアで活躍して、代表にも、ローマにもアピールしていきたいという事だと思うので、この賭けが成功したらいいなと思います。
如月さん、お久しぶりです。
フロレンツィ移籍ですか…。
いろんな人の意見がありますが、自分の気持ちは移籍してほしくないです。
如月さんが、コメントに書いてるように、トッティでさえも今の時代ではローマに残る事は出来なかった…のように、難しい時代(過去のクラブ経営者と現経営者の考えの違い等)になっているのは仕方がないのかもです。
人は義理や人情だけで動く事は難しいですが、過去のローマにはそれが有ったような気がします。
ローマとの馴初めは最初はトッティでしたが、それを見たり聞いたりして自分はますますローマの虜になったと思ってます。
なので、本音はローマで活躍して欲しい。でも、移籍するなら売って損した!と思わせる位の活躍をして欲しいですね。
長文失礼しました。
アズゥさん
お久しぶりです。
以前に比べてクラブも大きくなり、そのなかで生え抜きにキャプテンマークを任せる難しさを感じます。
そのうち、ローマらしさとは何か、それは損なわれたのかというアンケートしてみたいですね。