クリス・スモーリング特集~星に手はとどくかも

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寓話の世界に憧れる。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』みたいな物語の主役になりたい。いや、人生にはまだ自分では想像もつかない奇跡、物語があると信じている。

コールドスリープして、数十年後の彼女と丘の上で出会う軌跡を信じてる。ペンフレンドと桜の花びらが落ちる速度について話したあの日を信じてる。愛するクラブのスクデットを信じてる。小さなレストランの主人が話す奇想天外な身の上話を信じてる。カモメがあの子にキスしなよと鳴くのを待っている。女性声優にやたら多い弟の実在を信じてる。時間が止まる腕時計を誰かがプレゼントすると思っている。胸がキツくて試着した水着が脱げないのお兄ちゃん手伝って!と言ってくる妹の登場を待ちわびている。最後の方は何オンデマンド?ですけど、色々と信じて今年も終わりそう。

バッジョので一番好きなのが、記者に言い放った「ワールドカップ、諦めてないよ」という一言で、それでいながら召集発表の当日にアルゼンチンに旅立つそのファンタジーに痺れまくったぼくは、私生活で「○○、諦めてないよ」と言いまくり、当時のローマ速報でも「ローマ、スクデット諦めてないよ」てなことを頻繁に書いていた。

あ、ローマに関係ないこの話もう止めた方がいいですか?まあ・・・そうですよね。興味ないですよね。じゃ代わりにクリス・スモーリングの話させて頂きますね。そもそもクリスと聞いて、クリス・ペプラーを思い浮かべるFMレディオ世代のぼくが、クリスと聞いてクリス松村しか選択肢を持たない君たち若い世代に何を伝えられるかと言えば、それはクリス・スモーリングにほかならない。ヴィオラ戦で久しぶりに見た彼とマンチーニのコンビは、安定のスモチーニでした。マンチェスターユナイテッドからのレンタルながら、既にローマでは絶対的な中心選手として定着している英国人ディフェンダー、クリス・スモーリング。以前の彼がマンチェスターユナイテッドではどのような立ち位置、プレイヤーだったのかをお伝えすべく、プレミアパブ代表の内藤秀明さんから様々な話を伺いました。

なぜ今、スモーリングが?

如月:自己紹介をお願いします。

内藤:プレミアパブというファンサイトを運営してるサッカーライターの内藤秀明と申します。クリスティアーノ(ロナウド)きっかけでマンチェスター・ユナイテッドを13年くらい追っかけています。

如月:元々、プレミアファンの方はスモーリングはこういう選手だよ、こんなエピソードある、こんなプレースタイルだって(知識が)あるかもしれないけど、ローマファンからすると移籍市場のギリギリでレンタルで滑り込んできた、ちょっと年齢もいってる選手という先入観を持っていました。

内藤:まあ確かに、よくクラブ側も受け入れたな感はありますよね。

如月:確かにセンターバック足りないというのはあったんですよ。ペトラーキスポーツディレクターがずっとそこを補強ポイントに挙げていたのですけれども。だけど、まさかこのギリギリでスモーリング来て、どんな選手なんだろうって。

内藤:うん。

如月:メディアも結構手厳しかったですよ。最初は。インタビューでは「20代後半のキャリアで経験を積んだ選手が、いきなりいま異国でドライローンで来る。それ自分でどう思ってんの?」みたいな訊かれ方されていた。

内藤:それでスモーリングはなんて答えていたんですか?頑張るしかないみたいな?

如月:自分はプレミアに恩があって、すごく良い思い出しかないんだけど、やはりディフェンダーとしてやってきたからには、他のリーグでも通用するのか、挑戦せずに終わりたくないんだよ──

内藤:アハハハ

如月:そこで挑戦する機会があるんだったら、やっぱりそこをやらないという選択肢は俺にはないんだよという、まあイケメンな事を言ってまして。

内藤:ぼくからすると突っ込みたいところだらけで(笑)

如月:じゃそこを教えて下さい(笑)。で、そういうところがあって、開幕始まっていきなりコンディション不良で試合出れなかったんですよ。さらにファンからも懐疑的な意見が出てきて・・・

内藤:そもそもイングリッシュ(英国人)は外国語が苦手だし、馴染めるのかという不安はあったりする。

如月:ようやく満を持してプレーしたら凄かったんですよ。ドンズバでハマって、ここ最近までタックル成功率100%とか、リカバリー率が高かったりとか、試合観ていてももうほとんどミスはない。じゃなぜ、こんな選手が来たのか・・・。ヨーロッパリーグのイスタンブール戦ではキャプテンマーク巻きましたから。

内藤:いや、もう意外ですね。

如月:その意外が自分やプレミアを知らないロマニスタには判らないんですよ。でありながら、ネットで調べると良いこと書いてる人ほとんどいない。

内藤:アハハハ、そうですね。

如月:オモシロエピソードばっかりで。だからぼくが調べて、これがスモーリングだ!って、それっぽいこと書くよりは、プレミアを知っている人に教えてもらった方が早いんじゃないかと思って、マンチェスターユナイテッド公式ファンクラブに問い合わせたら、内藤さんから「だったら実際にお会いして話しましょうよ」となった。

内藤:ええ。

如月:そこから、今日会うまで中二日みたいな。ビッグクラブのタイムスケジュールで。

内藤:ご対応頂いてありがとうございます(笑)

如月:というわけで、早速色々訊いて行きたいのですが、そもそもスモーリングってユナイテッドではなんて呼ばれていたんですか?

内藤:日本だとよくスモーとか。

如月:スモー?

内藤:相撲。

如月:ドスコイの?

内藤:そうドスコイの。あとはフィル・ジョーンズとセットでスモーンズなんて呼ばれたりとか。ローマではなんて呼ばれているんですか?

如月:あまりにもプレーが神々しすぎて、まだニックネームで呼べるようなファンの心理ではないです。ファンの親近感が追いついてない。

内藤:アハハハ

如月:でもたまにスーモって言ってる。

内藤:まさかの住宅情報(笑)あと、一時期大統領って呼ばれてました。オバマに似ているから。

如月:アハハハ。大統領!その雑なニックネームの付け方は確実に英国人のセンスですよ。

内藤:大統領は万国共通だったような。それこそデイリーミラー辺りはスタメン発表で雑に大統領って書いたり。

軽いプレーのままではビッグクラブじゃ生き残れなかった

如月:サポーターから観たスモーリングはどのような選手、人物だったのでしょうか?

内藤:ネットゴシップが上がるようなタイプではないかなと。練習さぼったりするタイプではないかと思います。

如月:何年くらい在籍していたんですか?

内藤:もちろんファーガソン時代で、フラムから来たのは2010年。期待の有望株としてやってきた感じでしたね。ただ、試合には出てると言えば出ているんですけど、結構伸び悩んでいた時期が長くて、ファンハール政権(2014-2016)までは伸び悩んでいたと言ってもよいですよね。軽い守備が直らなくて。

如月:ただ、ユナイテッドというビッグクラブで、軽い守備で許される選手ってなかなかいないじゃないですか?そこをなんでスモーリングは9年間サヴァイヴしてこれたのか?

内藤:それは僕も聞きたい(笑)フィル・ジョーンズも生き残っている実情があるんで、なんでこうなっちゃったんだという。仮説としてあるのは、ファーガソン以降は監督がコロコロ変わっちゃって、各監督が、自分の色をより色濃く出すために優先度高いポジションから優先的に補強していった結果、根幹である守備は後回しになっていって、ズルズルとここまで来ちゃった──な気はしています。良くも悪くもスモーリングは、欠点もあるんですけど、致命的な欠点はなく足元は下手ですけど・・・

如月:そうなんですね。

内藤:というのもあって、まあスモーリングは残しておくかみたいな。監督が自分の色を出すために他のポジションから替えていって、モウリーニョだったらでかい中盤をおきたいとか、ファンハールだったら左利きのセンターバックを一枚獲っておきたい、右はスモーリングでいいみたいな。他のポジションで個性出そうとした結果、たまたまスモーリングは手を着けられなかった感じ。

如月:逆に言うとそこそこ計算ができる選手。(監督からすれば)いい意味でも悪い意味でも、こいつはここまではやらないけど、これ以下ではない。

内藤:そう。ファンハールの頃が転機だと思っていて、そこまではミスも相当多かった。例えば、カウンターの場面で、1対1や数的同数になったタイミングで、あっさりタックルでかわされて失点という状況が多かったんですけど、ファンハールはそこで一旦粘ろうね、と。安直にタックルしちゃダメだよというプレーを覚えたおかげで結構計算が立つようになった。それで「ここはセンターバックとして最低限やっちゃいけないだろ」という手痛いミスはしなくなった。それで生き残ったのだとすればファンハールのおかげ。

如月:スモーリングがローマに来た理由というのが、パウロ・フォンセカ監督のハイライン戦術なんですよ。かなり押し上げて押し上げて、そのスタイルが自分に合っているとスモーリングは毎回インタビューで話している。ローマって、いつでもハイラインでやりたいんですよ。中盤をコレクティヴに狭めて。でも戦術的な穴もいっぱいあって、常に裏の広大なスペースを走られてきた。でも今季はスモーリングとファシオで上手くコントロールしているんですよね。そこで思うのが、マンチェスター・ユナイテッドと同じような守備戦術がローマにあったのかな、もしくはそういう風に感じたから、じゃこれ俺やれんじゃねえか?って感じたのかなという。その点についてはどう思いますか?

内藤:マンチェスター・ユナイテッドとの共通点は一旦さておき、フィットで言うと、スモーリングは意外と足が速いので、ハイライン自体は対応できるんじゃないのかなと思っていて、かつファンハール時代に対人で粘くいけるようになったんで、そこでローマの戦術にフィットしているという話は納得できるのと、あとなおかつスモーリングは、今集中しなきゃいけないよね場面で大きなミスはないんですけど、どっちかというとベタ引きして、俺誰につかなきゃいけないんだっけ?というマークが曖昧になったときに、相手の選手フリーにさせちゃうので、役割がわかりやすいハイラインの方が向いているのかもなと思いますね。ユナイテッドとのフィットで言うと、結構今のユナイテッドは前がかりに戦えないというか、攻撃的なタレントが不足していて押し上げきれないんですよね。

挑戦の意味

内藤:スモーリングは挑戦したいと言ってますけど、それはぼくからしたら言っているだけ感があって、単純にリンデロフが加入して、マグワイアも来て、センターバックの序列がここに来て一気に落ちたんですよ。

如月:なるほど。

内藤:出られない状況になったから出た、そっちのほうがきっかけとしては大きかったんじゃないかなと思っていて。逆にスモーリングにとっては可愛そうな環境だったと言うか、プレミアのトップクラブでやるには、伸びしろもありながら成長は止まっていた印象があったので・・・。

サポーターからの支持率

如月:ファンから愛されていたんですか?というのは、ローマのファンというのはアホみたいに選手に対しての愛情が深いんですよ。控えだけじゃなく、プリマヴェーラの──アカデミーの選手に対しても愛着を持っているファンが多い。(ユナイテッド時代の)スモーリングは出れない時期があった、そこで、どこまでファンが寄り添っていたのかというのはロマニスタとしては気になります。

内藤:地元ファンと日本のファンで温度差はあるのだろうなというのはありつつも、スモーリングとジョーンズはユナイテッド低迷の象徴としてネットでいじられることが多いのは事実。スタジアムに通っているファンがどう感じているのかは正直判らないですが、嫌いじゃないとは思いますよ。頑張ってくれてましたしね。かと言って満足していたのかと言えばそうじゃないのが本音なんじゃないかな。やはりリオ・ファーディナンドやヴィデッチといった鉄壁の選手がいたクラブなんで、そこと比較すると出て行けとまでは言われないまでも満足ではない。スモーリングに関しては、個人的には、あと2,3年早く外国でチャレンジして、戦術を学んで帰ってきてくれてればなというのは前から思ってたんですよ。そういう意味では、おお!やっとチャレンジしてくれた!という気持ちもあります。一方で言語面の問題。イングリッシュは外国語学ぶのを苦手としていて、実際イングランド人って外国で成功している選手が少ない。ハーグリーブスやベッカムくらい。イタリアの場合は移籍した選手も少ない。マイカ・リチャーズとかはいましたけど…‥‥

注:2014-2015にフィオレンティーナに在籍していた。

如月:ローマで言うと、一番の黒歴史はアシュリー・コール。

攻撃センスは・・・

如月:しかし、ここまで2ゴール。今季のローマのセットプレーの大きなアクセント、オプションとして頼られているんですよね。守備は今たくさんお伺いしましたが、攻撃面ではどうだったのでしょうか?

内藤:シーズンによってはリーグで年間4得点決めていたりもしますが。

如月:その時の監督は誰ですか?

内藤:ファンハールとモウリーニョでそれぞれ4得点決めたシーズンがあります。その2シーズンくらいで、あとは0か1ゴールなんですよ。

如月:そうなんですね。

内藤:なのであまり決めているイメージがありませんね。あとスモーリングってでかいんですけど、意外と線が細い。プレミア基準で言うと空中戦は普通、あるいはややちょっと弱いんじゃないかくらい。ただ戦術はこまかいイタリアだけど、身体能力のレベルではプレミアの方が上。その環境差が(今のローマでの)フィジカルおばけとして振る舞えるのかもしれませんね。

如月:確かに観ていると、戦術的な部分というのはなかなか感じないんですよ。

内藤:スモーリングのプレーにですか?

如月:そうです。スタンドアローンというか、一人で考えて、一人で空中戦に競り勝ってっていう。そういった意味では、経験豊富というか、クレバーというか、頭の良さはすごい感じるんですよ。

内藤:スモーリングって結構複雑な事しようとすると、ここのマークの受け渡しはどうするの?こいつは誰が見るのみたいな。特に押し込まれて入り乱れてごっちゃごっちゃの状態だとすぐにマークをズラしちゃうし、それこそコーナーキックの単純なマークですら剥がしちゃうことが多かったんで。

如月:そうなんですね。

内藤:だからそこなんですよ。プレミアでは身体能力でも頭一つ抜けられず、戦術面でも物足りない。足元も上手くない。武器が見えづらい状態になっちゃってたと思うんですよ。でも他の環境に行けば、少なくとも身体能力は高いというところで使い所があるのでしょうね。ぼくローマの試合観ていないから判りませんけど、そんな風になってるんじゃないかしらと思ったり。

如月:おそらく、これを読んでるロマニスタは「なるほど、そうだよな」って思ってます。

内藤:アハハハ


内藤秀明:1990年生まれ。大阪府箕面市出身。プレミアリーグのファンサイト「プレミアパブ」の代表、マンチェスターユナイテッド・サポーターズクラブジャパン会長。大学時代に1年間イギリスに留学し、FAコーチングライセンスを取得。現在はプレミアパブの代表としてトークイベントやフットサルイベントを主催しつつ、ライターとしても複数のメディアに寄稿している。2019年1月に初の著書『ようこそ!プレミアパブ』上梓。


ここで宣伝。note版大人のローマ速報でスモーリング特集しています。1人呑みや、仕事の合間のひと休みにどうぞ。

大人のローマ速報 11月号①『クリス・スモーリングインタビュー』|ASローマ速報~ROMANISMO|note
まえがき 俺はやさぐれていた。 いや、狼のように飢えていたのだと言い換えてもよい。親父のガレージから拝借したパブリカ・スターレットの助手席に、いつの間にか家に居着いた元ピンク女優のSF小説家を乗せて、武蔵野台の坂下にある小さな銀行を襲撃する算段の俺だ。気分はすっかりボニー・アンド・クライドだった。 それに...

 

ローマで活躍すればするほど、次の夏にプレミア復帰してしまうのではないかと思わないでもないスモーリングですが、この移籍がユーロ召集の為の出場機会を求めた一時的なものでないことを祈るばかりです。大きな目標を達成して、来季も残りたいと思わせたいね。しかし、重要なのは今であり、次にどうなるかは6月に考えたいところです。ペトラーキは「彼の気持ちが一番の決め手になる」と話しています。ただ、あれだけインテルに行きたがっていたジェコが1ヶ月で残留に心変わりするわけですからね。クリスが何を選択するのか、これはある意味楽しみな答え合わせとなるでしょう。

あと、内藤さんと話しているうちに、もしかして、ユナイテッド時代のスモーリングとファン・ジェズスは、立ち位置が似ているような気がしてきましたね。

そう言えば冒頭で、クリスといえば、クリス・ペプラー世代と書いた如月ですが、もうひとつクリスで思い浮かぶ人がいました。英国の歌手クリス・レアのヒットソング『ドライヴィング・ホーム・フォー・クリスマス』をお届けして今夜のローマ速報を優しく終えたい思います。

ロマニスタのみなさん、メリークリスマス!来年もジャッロとロッシのファッキン革命を起こそうぜ!

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コメント

  1. 匿名 より:

    ロマ速ラジオ楽しみにしています。
    あればなお嬉しいです。
    Merry Christmas🎄✨

  2. 匿名 より:

    上のコメント、如月さんの今日の一曲とか が抜けていました… スミマセン…

    • 如月/kisaragi 如月/kisaragi より:

      匿名さん
      返事遅れましたがメリークリスマス&ハッピーニューイヤー。
      ラジオやるときは今日の一曲やりたいですけど、著作権の関係で出来ないんですよ。なので定期的にこちらご紹介していきます。

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